凝集処理とは
排水 凝集分離 用水・純水 前処理・ろ過凝集とは、排水中に分散している懸濁物質が相互に引き合い、吸着・集合してより大きなかたまりとなり、沈降することをいいます。自然界に存在する微細粒子は、一般的にマイナスに帯電しているため、互いに反発して凝集しません。そこで、プラス荷電をもつ凝集剤を添加すると中和され凝集が起こります。その凝集の方法などについて解説します。
解説
凝集処理は、処理水の固液分離※を容易にするための操作で、砂ろ過、加圧浮上分離、沈殿分離などと併用されます。用水処理にしても排水処理にしても、システム全体の処理の安定が得られるかどうかは、この凝集プロセスの良否に負うところが大です。※固液分離:固(除去対象物)と液(水)に分ける操作のこと。
凝集処理は大きく二つの工程に分けられ、まず凝結反応によって微細フロック(FLOC:かたまり)を析出させ、次にこれを成長させる凝集反応でフロックを粗大化します。
■凝結反応
自然界に存在する微細粒子は一般にマイナスに帯電しているため、互いに反発して凝集しません。そこで、ここにプラス荷電をもつ凝集剤を添加すると荷電が中和され凝集が起こります。この段階でフロックはまだ小さいため、基礎フロックと呼ばれます。
■凝集反応
水中の微粒子と逆の電荷をもつ凝集剤を投入して基礎フロックとした後に、凝集助剤(ポリマー)を入れて基礎フロックを吸着。粗大フロックとして沈殿しやすくします。この基礎フロックを成長させるのが凝集反応です。フロックの沈降速度は粒径の2乗に比例して大きくなるため、固液分離する場合にフロックは大きいほど有利となります。
■凝集の良、不良の判断基準
凝集が良好に反応すると粗大フロックが形成され沈殿しやすくなります。排水自体の清澄度も高くなり、処理水質が良くなります。
凝集剤の種類
凝結反応で使われる凝集剤は、硫酸アルミニウム(硫酸バンド※1)やポリ塩化アルミニウム(PAC※2)などのアルミニウム塩や、塩化第二鉄、ポリ硫酸第二鉄などの鉄塩であり、無機凝集剤とも呼ばれます。フロックの粗大化に使用される薬剤は、高分子凝集剤または凝集助剤(ポリマー)と呼ばれ、用途に応じていろいろな種類がありますが、基本的にはポリアクリルアミドの部分加水分解物を使用しています。
※1 硫酸アルミニウムの別名で“硫酸バンド”とも言い、バンドは礬土のカタカナ表記です。「礬」は明礬(みょうばん)を意味する漢字で、礬土とは複塩である明礬の主成分、硫酸アルミニウムの略称です。
※2 PAC:polyaluminium chloride
ちなみに、排水処理では凝集剤とポリマーを使用しますが、用水処理では凝集剤にPACを主に使用しています。用水処理でポリマーを使用するケースが少ないのは、ポリマーが次の工程に残留した場合、イオン交換樹脂やRO膜(逆浸透膜)の有機物汚染を引き起こす原因になるからです。
区分 | 薬品名 | 作用 |
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無機凝集剤 (無機凝結剤) |
硫酸アルミニウム (Al2(SO4)3) |
アルミニウムイオン(Al3+)、第二鉄イオン(Fe3+)、第一鉄イオン(Fe2+)などの多価カチオンが懸濁粒子の荷電を中和する。同時に水酸化アルミニウム(Al(OH)3)などの水酸化物が粒子を吸着するので、若干のフロック化作用もある。 |
ポリ塩化アルミニウム [Al2(OH)nCl6-n]m |
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塩化第二鉄 (FeCl3) |
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ポリ硫酸第二鉄 [Fe2(OH)n(SO4)3-n/2] |
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硫酸第一鉄 (FeSO4) |
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消石灰 (Ca(OH)2) |
中和剤としての目的が主であるが、カルシウムイオン(Ca2+)が荷電中和の作用(無機凝集剤としての作用)を持つ。 | |
海水 | 海水中のマグネシウムイオン(Mg2+)、カルシウムイオン(Ca2+)が無機凝集剤としての作用をする。 | |
低分子量のカチオン性 高分子凝集剤 |
懸濁粒子の荷電中和とアニオン性溶解性物質の不溶化作用を持つが、フロック化作用は小さい。 真空、転写型脱水の脱水剤および無機凝集剤の代替として用いられる。 |
|
高分子凝集剤または凝集助剤(ポリマー) |
アニオン性 |
無機、有機凝結剤にて凝集しやすくなった粒子を架橋し、粗大フロック化する。 |
カチオン性 |
懸濁粒子の荷電中和は架橋による粗大フロック化の作用を併せ持つ。 通常は生物処理汚泥の脱水に用いられる。 |
凝集剤の選び方と添加量の決め方(動画解説)
排水を凝集試験(ジャーテストや加圧浮上試験)し、凝集剤の選定および添加量を決定します。試験方法の詳細は動画をご覧ください。
凝集処理の管理でよくある問題と、対策のカギとなる“一歩進んだ凝集処理”
【よくある問題】
工場から出る排水は一定ではなく変化し、その都度凝集剤の添加量を調整する必要があります。そのため、以下のいずれかの問題が発生することが多いです。
1)凝集剤の添加量調整に手間がかかる
2)添加量が不足して、処理水が悪化する
3)添加量が多すぎて、コストがかかる
【対策】
これらの問題は人手の限界という点で共通しています。そのため『凝集剤の添加量調整を自動化する』方法が有効な対策です。一般的に凝集処理の自動制御は、処理水の濁度をモニタリングしながら凝集剤の添加量を調整しますが、この方法では数時間のタイムラグが生じ、制御がうまくいかないことがあります。
一歩進んだ凝集処理では、凝集槽で凝集状態を直接モニタリングして凝集剤の添加量を調整するのでタイムラグがなく、より正確に制御ができます。管理・調整の手間が省け、過剰な薬剤を注入する無駄もなくなり、処理水質の安定化に貢献できます。
(参考)
製品・サービス特集:
一歩進んだ凝集処理 「原水の水質変動に強い凝集処理」に進化させる「排水向け テレマックNEO」
相談事例:
排水処理の自動制御で安定・省力化により年間コスト3百万円削減
用語解説
ポリマー
単分子が重合した物質であり、凝集剤の場合は高分子凝集剤と呼ばれる。
CHECK POINT!
- 排水中の微細粒子を集めて大きなフロック(FLOC:かたまり)とするのが凝集処理です。
- 凝集処理は、凝結反応と凝集反応の二段階で行われます。
解説者
栗田工業株式会社
池上徹