No.057

生物処理とは

排水 生物処理

「生物処理」についてお話いたします。排水に含まれる有機物を微生物に分解させる方法を生物処理といいます。微生物は酸素が必要な好気性微生物と、酸素を必要としない嫌気性微生物に大きく分かれます。それぞれの微生物が有機物を分解するメカニズムについて解説いたします。


解説

排水に含まれる有機物を処理する場合、微生物に有機物を分解させる方法を生物処理と呼びます。ここで用いる微生物は、空気中や水中に酸素が存在する条件下でのみ生存できる好気性微生物と、酸素が存在しない条件下で生存できる嫌気性微生物に分けられます。また嫌気性微生物は、酸素があれば酸素を使って有機物を分解して生育し、存在しなければ嫌気性で分解して生育する通性嫌気性微生物と、酸素の存在下では生存できない絶対嫌気性微生物に分けられます。好気性微生物は、水中に溶解している酸素(溶存酸素:DO)を使って有機物を水と炭酸ガスに分解し、そのエネルギーを使って増殖します。この働きを利用した排水処理が好気性生物処理で、排水処理や下水処理に多く用いられている活性汚泥法が代表的です。いっぽう通性嫌気性微生物には、溶存酸素のない環境で硝酸を還元して(硝酸の中の酸素を用いて)窒素ガスを発生させるものがあります。この反応は、窒素を含んだ排水の脱窒処理に広く採用されています。また絶対嫌気性微生物の代表であるメタン生成菌を使った処理は、有機物の分解過程でエネルギーとしてのバイオガスが得られるため脚光を浴びています。

好気性微生物と嫌気性微生物

有機物の分解経路は複雑

排水中の有機物には、溶解性と不溶性の固形物(懸濁物質:SS)があり、それぞれ易分解と難分解に分けられます。これらは多種類の微生物の働きによって、いくつか中間代謝物を経由して、好気性処理では最終的に炭酸ガス(CO2)と水(H2O)に分解され、嫌気性処理では、バイオガスと炭酸ガス、水に分解されます。

有機物の分解経路

用語解説

中間代謝物

生体中に取り込まれる分子は、酵素に触媒される何段階もの反応を経て最終生成物を生じますが、この途中の反応で生成される化合物をすべて中間代謝物と呼ぶ。

CHECK POINT!

  • 排水の有機物を微生物に食べさせて処理する方法を生物処理と呼びます。
  • 微生物は、酸素が必要な好気性微生物と、酸素を必要としない嫌気性微生物に大きく分けられます。
KCRセンター小川晋平

解説者

栗田工業株式会社

小川晋平

出典:よくわかる水処理技術(株式会社日本実業出版社発行)

水処理教室バックナンバー

同じカテゴリの記事をご覧いただけます。

  • No.012 排水 凝集分離 用水・純水 前処理・ろ過

    凝集処理とは

    凝集とは、排水中に分散している懸濁物質が相互に引き合い、吸着・集合してより大きなかたまりとなり、沈降することをいいます。自然界に存在する微細粒子は、一般的にマイナスに帯電しているため、互いに反発して凝集しません。そこで、プラス荷電をもつ凝集剤を添加すると中和され凝集が起こります。その凝集の方法などについて解説します。

  • No.046 排水 汚泥処理

    汚泥処理とは? 汚泥、薬品、脱水機の種類

    汚泥の種類について、また汚泥処理がどのように行われているかを解説します。

  • No.061 排水 凝集分離

    難分解性シアン錯塩の凝集処理

    「ウェルクリン C‐200」を使用したシアンの処理方法についてお話いたします。シアン(CN)を含む排水は、メッキ工程から排出される排水と、鉄鋼工場のコークス製造排水に代表される炉内の化学反応で合成される排水の2種類に大別されます。前者はシアン化ナトリウム及び、鉄・亜鉛・ニッケル・銅・金・銀などの金属シアノ錯体が含まれ、後者は有機物や反応中間体を含みます。これら、幅広いシアン化合物を処理することが可能な「ウェルクリン C‐200」を使用したシアンの処理方法について解説いたします。

  • No.060 排水 凝集分離 排水その他

    置換法による重金属錯体の処理

    「置換法による重金属錯体の処理」についてお話いたします。排水中に含まれる重金属が他の種類の化合物と結合している状態を錯体といいます。その錯体の中でもキレートという安定した形を形成している場合は置換法を用います。その置換法や、その他の処理方法について解説いたします。

  • No.059 排水 凝集分離

    懸濁物質を沈降させて集める沈殿処理装置

    「沈殿処理装置」についてお話いたします。凝集処理を施し、粗大化した懸濁物質のうち、比重の大きなものは沈降させ固液分離します。この固液分離を効率化するため、沈降処理装置にはいろいろな種類があります。それぞれの仕組みを解説いたします。

  • No.058 排水 生物処理

    沈殿槽を省いた生物膜式活性汚泥法

    「生物膜式活性汚泥法」についてお話いたします。生物膜式活性汚泥法は、充填材に微生物を付着させる処理方法です。沈殿槽の小型化、もしくは省略により、排水処理設備の省スペース化が可能です。この方法には固定床方式と流動床方式があります。それぞれのしくみを解説いたします。

ログイン・ユーザー登録

水処理教室(動画版)の閲覧や製品カタログのダウンロードを
ご希望の方は、ログインまたはユーザー登録を行ってください。

WEBからのお問い合わせ

水処理に関するご相談や製品・サービスに関する
ご質問など、お気軽にお問い合わせください。