生物処理とは
排水 生物処理「生物処理」についてお話いたします。排水に含まれる有機物を微生物に分解させる方法を生物処理といいます。微生物は酸素が必要な好気性微生物と、酸素を必要としない嫌気性微生物に大きく分かれます。それぞれの微生物が有機物を分解するメカニズムについて解説いたします。
解説
排水に含まれる有機物を処理する場合、微生物に有機物を分解させる方法を生物処理と呼びます。ここで用いる微生物は、空気中や水中に酸素が存在する条件下でのみ生存できる好気性微生物と、酸素が存在しない条件下で生存できる嫌気性微生物に分けられます。また嫌気性微生物は、酸素があれば酸素を使って有機物を分解して生育し、存在しなければ嫌気性で分解して生育する通性嫌気性微生物と、酸素の存在下では生存できない絶対嫌気性微生物に分けられます。好気性微生物は、水中に溶解している酸素(溶存酸素:DO)を使って有機物を水と炭酸ガスに分解し、そのエネルギーを使って増殖します。この働きを利用した排水処理が好気性生物処理で、排水処理や下水処理に多く用いられている活性汚泥法が代表的です。いっぽう通性嫌気性微生物には、溶存酸素のない環境で硝酸を還元して(硝酸の中の酸素を用いて)窒素ガスを発生させるものがあります。この反応は、窒素を含んだ排水の脱窒処理に広く採用されています。また絶対嫌気性微生物の代表であるメタン生成菌を使った処理は、有機物の分解過程でエネルギーとしてのバイオガスが得られるため脚光を浴びています。

有機物の分解経路は複雑
排水中の有機物には、溶解性と不溶性の固形物(懸濁物質:SS)があり、それぞれ易分解と難分解に分けられます。これらは多種類の微生物の働きによって、いくつか中間代謝物を経由して、好気性処理では最終的に炭酸ガス(CO2)と水(H2O)に分解され、嫌気性処理では、バイオガスと炭酸ガス、水に分解されます。

用語解説
中間代謝物
生体中に取り込まれる分子は、酵素に触媒される何段階もの反応を経て最終生成物を生じますが、この途中の反応で生成される化合物をすべて中間代謝物と呼ぶ。
CHECK POINT!
- 排水の有機物を微生物に食べさせて処理する方法を生物処理と呼びます。
- 微生物は、酸素が必要な好気性微生物と、酸素を必要としない嫌気性微生物に大きく分けられます。
出典:よくわかる水処理技術(株式会社日本実業出版社発行)
解説者
栗田工業株式会社
小川晋平