メタン生成菌を利用したUASBなどの処理法
排水 生物処理「メタン生成菌を利用したUSABなどの処理法」についてお話いたします。嫌気性処理では、増殖の遅いメタン生成菌を反応槽に保持する手段として、浮遊法、固定床法、流動床法、UASBなどいくつかの方式があります。その中でも最近注目されているUASBについて解説いたします。
解説
嫌気性処理では、増殖の遅いメタン生成菌を反応槽に保持する手段として、浮遊法、固定床法、流動床法、UASBなどいくつかの方式があります。このうち浮遊法は、活性汚泥法と同じくメタン生成菌を浮遊状態(活性汚泥のフロック状態)で保持する方式で、し尿処理や高濃度排水処理に用いられています。また固定床法は、生物膜式活性汚泥法と同じく、反応槽内の充填材の表面やすき間にメタン生成菌を付着させて保持する方法です。さらに流動床法は、反応槽内に流動する充填材表面に生物膜として保持する方式です。固定床法や流動床法はメタン生成菌の流出が防止できるため、低濃度排水まで適用できます。ただしメタン生成菌の中には、糸状で生育して反応槽内のガスや水の流れで互いに絡まり、粒径0.3~3mmの顆粒状になる種類もいます。この糸状のメタン生成菌が形成した顆粒はグラニュールと呼ばれ、高活性のメタン生成菌が高密度に濃縮されています。そこでこのグラニュール状のメタン生成菌を反応槽内に保持し、発生するメタンガスや炭酸ガスを反応槽上部で分離するUASB(Upflow Anaerobic Sludge Bed)が登場しています。
ガス・固体・液体を効率的に分離
UASBは、固定床法や浮遊法に比べて多量のメタン生成菌を保有することができるため、活性汚泥に比べて10~20倍の高い負荷量で運転でき、コンパクトな処理設備となります。UASBでは、酸生成反応を行わせる酸生成槽に排水を注入し、pH調整を行いながら蒸気や温水によって35~37℃に保ちます。そして酸生成反応で酢酸主体の有機酸や低級アルコールまで分解した後、槽上部でグラニュールとガスを効率的に分離し、処理水槽へ流下します。
用語解説
低級脂肪酸(有機酸)
炭素数が1~5の鎖状アルコールのこと。主なものにメチルアルコール(炭素数1)、エチルアルコール(炭素数2)やペンチルアルコール(炭素数5)などがある。
CHECK POINT!
- メタン生成菌を高密度に保持したのがUASBです。
- UASBでは、発生したメタンガスを効率的に回収できます。
出典:よくわかる水処理技術(株式会社日本実業出版社発行)
解説者
栗田工業株式会社
佐藤禎一