高度な処理水が得られる膜分離式活性汚泥法
排水 生物処理「膜分離式活性汚泥法」についてお話いたします。活性汚泥法の沈殿槽は曝気槽の汚泥混合液からSS(懸濁物質)を沈降分離し、上澄み液を得るしくみです。しかし、沈降が悪いと処理水に多量のSSが混入する場合があります。その対策として開発された膜分離式活性汚泥法について解説いたします。
解説
活性汚泥法の沈殿槽は、曝気槽の汚泥混合液からSS(懸濁物質、この場合の多くは汚泥)を沈降分離し、SSの少ない上澄み液(処理水)を得ることを目的としています。しかし汚泥混合液中のSSの沈降性が悪いと、沈殿槽で固液分離が不十分となり、処理水に多量のSSが混入するバルキングと呼ばれる現象が生じることがあります。そこで曝気槽内や曝気槽と連結している槽内に、孔径0.1~0.4μmのMF(精密ろ過)膜を設置してろ過する膜分離方法が登場しました。ここで使うMF膜には、薄い布状の膜を表と裏に2枚貼り合わせて袋状とした平膜と、外径が約1mm、内径が約0.6mmの中空糸膜があり、数十から数百枚(数百から数千本)の膜を組み合わせて膜ユニットとしています。そしてこの膜ユニットを曝気槽や膜分離槽に設置して、ユニット下部からポンプで吸引することで処理水を得ています。
高品質の処理水が得られる
膜分離式活性汚泥法による処理水は、膜面が裂けたり、多数の中空糸が切断するなどのトラブルを生じない限り、SSがなく大部分の大腸菌や一般細菌まで除去された高度な水質が得られます。また分子量の大きな色度成分や粘性物質なども少ないことから、処理水の回収再利用も可能となります。さらに沈殿槽が不要となるため、設備の設置面積も少なくなるなどメリットの多い処理方法と言えます。ただし長時間運転していると、膜表面に生物膜や未分解の粘性物質、流入SSなどが付着して開口部がふさがれてしまいます。そして閉塞が進むとろ過抵抗が高まり、処理水が得られなくなるため、定期的に膜ユニットをアルカリや次亜塩素酸ソーダなどで洗浄する必要があります。この場合、膜の処理水側から薬剤を膜の内側へ注入する方法や、膜分離槽内へ薬剤を投入して膜ユニットを薬剤に浸漬する方法が採用されています。
CHECK POINT!
- 沈降性の悪い汚泥には、MF膜でろ過する膜分離方法が用いられます。
- 膜分離式活性汚泥法は、沈殿槽が不要となる上に高品質な処理水が得られます。
出典:よくわかる水処理技術(株式会社日本実業出版社発行)
解説者
栗田工業株式会社
小川晋平