懸濁物質を沈降させて集める沈殿処理装置
排水 凝集分離「沈殿処理装置」についてお話いたします。凝集処理を施し、粗大化した懸濁物質のうち、比重の大きなものは沈降させ固液分離します。この固液分離を効率化するため、沈降処理装置にはいろいろな種類があります。それぞれの仕組みを解説いたします。
解説
水処理のプロセスでは、有機、無機を問わず、水の中の汚濁物質を不溶性の懸濁物質の形にして沈殿させ、水と分離するのが原則です。たとえば水に溶けている金属イオンの除去では、水酸化物や硫化物の形にして沈殿させ、固液分離します。沈殿分離は普通沈殿と凝集沈殿に分けられます。普通沈殿は凝集操作を施さずにそのまま沈降分離させるもので、自然沈殿とも呼ばれています。凝集沈殿は凝集処理をしてから懸濁物質を沈殿させる方法です。沈降分離は、水中の懸濁物質を水との比重の違いによって分離させるため、水面の面積が広い沈殿槽の方が効果的に沈殿させられます。しかし、広くて大きな沈殿槽を作るには建設コストも高くなってしまいます。そこで、沈殿速度を速めるための様々な工夫が考えられています。
用途によっていろいろなタイプがある沈殿槽
懸濁物質は、その粒子の比重や径が大きいほど早く沈殿します。そこで除去すべき粒子の沈降速度をみて、粒子径が微小な場合は、適当な凝集剤や凝集助剤を使用してフロック化することで粒子径を大きくします。また、沈殿槽にもさまざまな工夫がなされています。水面の面積が小さくても清澄な処理水を得るために沈殿槽内に偏流が起きないタイプ、生成した沈降汚泥を循環させることで微細フロックの発生を防止するタイプ、そして水量が一定ならば表面積を増やせば分離効率が増すことになるため、沈殿槽内に多数の傾斜板を設置して分離面積を増大させたタイプなどです。なお、下水処理でも懸濁物質を除去するために沈殿槽は使用されています。下水処理の沈殿槽は最初沈殿槽と最終沈殿槽があり、最初沈殿槽は下水中の比較的比重の大きいものを除去し、最終沈殿槽では、比重が小さく、流れによっては浮上しやすい微生物フロックを分離します。※フロックとは微生物の集合体が粒子状になったもののことです。
用語解説
凝集助剤
高分子の化合物で、小さなフロックを集合させて、大きなフロックとする働きがあり、無機凝集剤と併用して凝集効果を高める薬品。
CHECK POINT!
- 水処理では、汚濁物質を不溶性の懸濁物質の形にして水と分離します。
- 沈殿槽には、用途に応じていろいろなタイプがあります。
出典:よくわかる水処理技術(株式会社日本実業出版社発行)
解説者
栗田工業株式会社
池上徹