シアン処理で代表的なアルカリ塩素法
排水 凝集分離「シアン処理で代表的なアルカリ塩素法」についてお話しいたします。メッキなどに使われるシアンは猛毒、劇物のイメージが定着しており、一般排水基準以下の自主規制を設定して排水している事業所がほとんどです。その処理方法として最も古くからあるアルカリ塩素法について解説いたします。
解説
メッキなどに使われるシアンは毒性が強い物質です。その致死量はKCN(シアン化カリウム:青酸カリ)の化合物では約200mg/成人と言われています。したがってシアンを含む排水には一般排水基準値で1mg/L以下という厳しい水質基準値が適用されています。ただし猛毒、劇物のイメージが定着していることもあり、シアンを排出する事業者は自主規制によって基準値を設定し排水するのが普通です。そのためそれぞれの工場で、他の排水とは区別して独自の設備で処理されています。シアン含有排水は、一般的にアルカリ塩素法で処理されますが、アルカリ塩素法では処理できないシアン化合物が存在することが処理を複雑にしています。ここではまず、シアン含有処理技術として最も古くからあり、現在でも代表的な処理技術となっているアルカリ塩素法を紹介します。
二段階で分解するアルカリ塩素法
シアンはC(炭素)とN(窒素)の化合物であるため、最終的にはCO2(二酸化炭素)やN2(窒素ガス)にして分解することができます。そのためにシアンの分解は酸化反応で行い、酸化剤には次亜塩素酸ソーダを使用します。その反応は、すべての段階で塩素が作用してCN–→CNCl→CNO–→CO2+N2となります。この中でCN–→CNCl(塩化シアン)の反応はpH値に関係なく進行します。CNClはシアンの1/10程度の毒性をもつ揮発性の物質で、中性では安定していますが、アルカリ性では次亜塩素酸によって酸化されCNO–(シアン酸)になります。このCNO–は次亜塩素酸によって中性域で加水分解されCO2やN2になり、無毒化されます。以上のようにアルカリ塩素処理法では、シアンをCO2やN2まで分解するのに二段分解が適用され、最終的には無毒化されます。
(2021年4月、一部誤記を修正しました。)
用語解説
加水分解
化合物(塩類)が、水と反応して酸と塩基に分解される現象のこと。
CHECK POINT!
- 毒性の強いシアンは、アルカリ塩素法で処理します。
- シアンは、二酸化炭素と窒素ガスに分解して無毒化されます。
出典:よくわかる水処理技術(株式会社日本実業出版社発行)
解説者
栗田工業株式会社
佐藤禎一