No.011

汚濁物質に合わせた処理方法の使い分け

排水 凝集分離

「汚濁物質に合わせた処理方法の使い分け」についてお話いたします。一般的に汚染物質は、大きさによって浮遊物質(1~100μm前後)、コロイド物質(1nm~1μm前後)、それよりもっと微細な溶存物質の3つの形態に分かれます。その処理方法を種類別に分かりやすく解説いたします。


KCRセンター佐藤禎一

解説者

栗田工業株式会社

佐藤禎一

解説

排水処理としては、水に含まれている様々な汚濁物質を水から分離するか、あるいは分解などで変質させて汚濁物質としての特性を失わせるかです。この排水処理の方法を選択するには、汚濁物質がどんな形で水に含まれているか、とくにその物理的性状を知ることが大切です。一般に汚濁物質は、(1)浮遊物質、(2)コロイド物質、(3)溶存物質の三つの形態に分けられます。これらは厳密には分けにくいのですが、普通はその大きさから分類し、浮遊物質は1~100μm前後、コロイドは1nm~1μm程度、そして溶解性物質の形となるとコロイドよりもっと微細になります。水処理では、この大きさの違いが処理の難易に大きく影響し、一般にサイズの大きい浮遊物質が最も処理しやすく、小さいコロイドや溶解物質は処理に手間がかかります。

種類によって処理方法を使い分ける

水中の汚濁物質の除去対象物と適用処理法を下に示しました。表の中の1~4は物理的処理法と呼ばれるもので、大部分が凝集反応を利用した固液分離技術です。これらは比重差を利用した沈殿、浮上、遠心分離とろ過などで汚濁物質を分離します。また5~10の除去対象は溶解物質であるために、化学的処理方法での分解か吸着、あるいは分離膜などの物理処理技術が主体となります。なお汚水の中の汚濁物質を分離すると、スラリー(泥)状の汚泥となります。この汚泥は、凝集沈殿などによる物理処理汚泥と生物処理によって排出される有機性汚泥に大別されますが、いずれの場合も濃縮して脱水後処分されます。この脱水における固液分離が十分でない場合は沈殿槽に汚泥が蓄積し、処理水に汚濁物質が混入するという状態を招いてしまいます。

  除去対象物 適用処理法
1 夾雑物・スケール スクリーン・粗粒分離器
2 懸濁物質・浮上性物質 沈降・浮上・ろ過
3 コロイド性物質 凝集・珪藻土ろ過
4 エマルジョン 凝集・吸着・電気的方法
5 溶存物質 中和・酸化・還元・各種化学反応
6 溶存有機物 活性汚泥・嫌気処理・生物膜法
7 窒素・リン 硝化・脱窒・脱リン・凝集
8 微量有機物 活性炭・塩素酸化・膜処理
9 溶存無機物 電気透析・逆浸透膜・イオン交換樹脂
10 バクテリア MF膜・塩素殺菌・紫外線・オゾン

用語解説

固液分離

固(除去対象物)と液(水)を分ける操作のこと。

CHECK POINT!

  • 排水中の汚濁物質は、浮遊物質、コロイド物質、溶存物質の三つに分けられます。
  • サイズの大きい浮遊物質が最も処理しやすく、小さなものほど手間がかかります。

出典:よくわかる水処理技術(株式会社日本実業出版社発行)

水処理教室バックナンバー

同じカテゴリの記事をご覧いただけます。

  • No.012 排水 凝集分離 用水・純水 前処理・ろ過

    凝集処理とは

    凝集とは、排水中に分散している懸濁物質が相互に引き合い、吸着・集合してより大きなかたまりとなり、沈降することをいいます。自然界に存在する微細粒子は、一般的にマイナスに帯電しているため、互いに反発して凝集しません。そこで、プラス荷電をもつ凝集剤を添加すると中和され凝集が起こります。その凝集の方法などについて解説します。

  • No.046 排水 汚泥処理

    汚泥処理とは? 汚泥、薬品、脱水機の種類

    汚泥の種類について、また汚泥処理がどのように行われているかを解説します。

  • No.061 排水 凝集分離

    難分解性シアン錯塩の凝集処理

    「ウェルクリン C‐200」を使用したシアンの処理方法についてお話いたします。シアン(CN)を含む排水は、メッキ工程から排出される排水と、鉄鋼工場のコークス製造排水に代表される炉内の化学反応で合成される排水の2種類に大別されます。前者はシアン化ナトリウム及び、鉄・亜鉛・ニッケル・銅・金・銀などの金属シアノ錯体が含まれ、後者は有機物や反応中間体を含みます。これら、幅広いシアン化合物を処理することが可能な「ウェルクリン C‐200」を使用したシアンの処理方法について解説いたします。

  • No.060 排水 凝集分離 排水その他

    置換法による重金属錯体の処理

    「置換法による重金属錯体の処理」についてお話いたします。排水中に含まれる重金属が他の種類の化合物と結合している状態を錯体といいます。その錯体の中でもキレートという安定した形を形成している場合は置換法を用います。その置換法や、その他の処理方法について解説いたします。

  • No.059 排水 凝集分離

    懸濁物質を沈降させて集める沈殿処理装置

    「沈殿処理装置」についてお話いたします。凝集処理を施し、粗大化した懸濁物質のうち、比重の大きなものは沈降させ固液分離します。この固液分離を効率化するため、沈降処理装置にはいろいろな種類があります。それぞれの仕組みを解説いたします。

  • No.058 排水 生物処理

    沈殿槽を省いた生物膜式活性汚泥法

    「生物膜式活性汚泥法」についてお話いたします。生物膜式活性汚泥法は、充填材に微生物を付着させる処理方法です。沈殿槽の小型化、もしくは省略により、排水処理設備の省スペース化が可能です。この方法には固定床方式と流動床方式があります。それぞれのしくみを解説いたします。

ログイン・ユーザー登録

基礎学習動画の閲覧や製品カタログのダウンロードを
ご希望の方は、ログインまたはユーザー登録を行ってください。

WEBからのお問い合わせ

水処理に関するご相談やKCRセンターに関する
ご質問など、こちらからお気軽にお寄せください。