汚濁物質に合わせた処理方法の使い分け
排水 凝集分離「汚濁物質に合わせた処理方法の使い分け」についてお話いたします。一般的に汚染物質は、大きさによって浮遊物質(1~100μm前後)、コロイド物質(1nm~1μm前後)、それよりもっと微細な溶存物質の3つの形態に分かれます。その処理方法を種類別に分かりやすく解説いたします。
解説
排水処理としては、水に含まれている様々な汚濁物質を水から分離するか、あるいは分解などで変質させて汚濁物質としての特性を失わせるかです。この排水処理の方法を選択するには、汚濁物質がどんな形で水に含まれているか、とくにその物理的性状を知ることが大切です。一般に汚濁物質は、(1)浮遊物質、(2)コロイド物質、(3)溶存物質の三つの形態に分けられます。これらは厳密には分けにくいのですが、普通はその大きさから分類し、浮遊物質は1~100μm前後、コロイドは1nm~1μm程度、そして溶解性物質の形となるとコロイドよりもっと微細になります。水処理では、この大きさの違いが処理の難易に大きく影響し、一般にサイズの大きい浮遊物質が最も処理しやすく、小さいコロイドや溶解物質は処理に手間がかかります。
種類によって処理方法を使い分ける
水中の汚濁物質の除去対象物と適用処理法を下に示しました。表の中の1~4は物理的処理法と呼ばれるもので、大部分が凝集反応を利用した固液分離技術です。これらは比重差を利用した沈殿、浮上、遠心分離とろ過などで汚濁物質を分離します。また5~10の除去対象は溶解物質であるために、化学的処理方法での分解か吸着、あるいは分離膜などの物理処理技術が主体となります。なお汚水の中の汚濁物質を分離すると、スラリー(泥)状の汚泥となります。この汚泥は、凝集沈殿などによる物理処理汚泥と生物処理によって排出される有機性汚泥に大別されますが、いずれの場合も濃縮して脱水後処分されます。この脱水における固液分離が十分でない場合は沈殿槽に汚泥が蓄積し、処理水に汚濁物質が混入するという状態を招いてしまいます。
除去対象物 | 適用処理法 | |
1 | 夾雑物・スケール | スクリーン・粗粒分離器 |
2 | 懸濁物質・浮上性物質 | 沈降・浮上・ろ過 |
3 | コロイド性物質 | 凝集・珪藻土ろ過 |
4 | エマルジョン | 凝集・吸着・電気的方法 |
5 | 溶存物質 | 中和・酸化・還元・各種化学反応 |
6 | 溶存有機物 | 活性汚泥・嫌気処理・生物膜法 |
7 | 窒素・リン | 硝化・脱窒・脱リン・凝集 |
8 | 微量有機物 | 活性炭・塩素酸化・膜処理 |
9 | 溶存無機物 | 電気透析・逆浸透膜・イオン交換樹脂 |
10 | バクテリア | MF膜・塩素殺菌・紫外線・オゾン |
用語解説
固液分離
固(除去対象物)と液(水)を分ける操作のこと。
CHECK POINT!
- 排水中の汚濁物質は、浮遊物質、コロイド物質、溶存物質の三つに分けられます。
- サイズの大きい浮遊物質が最も処理しやすく、小さなものほど手間がかかります。
出典:よくわかる水処理技術(株式会社日本実業出版社発行)
解説者
栗田工業株式会社
佐藤禎一