純水設備の前処理
用水・純水 前処理・ろ過「純水設備の前処理」についてお話いたします。工業用水は浄水場で処理していないため濁質を含みます。また、井戸水は鉄やマンガンを含んでいる場合、汲み上げた後に酸化して濁質となってしまいます。その濁質を取り除くための純水設備の前処理について分かりやすく解説いたします。
解説
現在、工場で製造活動などに使われている工業用水は、おもに工業用水道と河川水・地下水(井戸水)によって供給されています。工業用水道の水は、上水道のように浄水場で処理されていないために濁質を含みます。河川水も同様です。また井戸水は、鉄やマンガンを含んでいると汲み上げた後に水が空気と触れて酸化し、Fe(OH)3やMn(OH)3などの水酸化物が析出して、濁質となってしまいます。そのため、そのまま工業用水として使うことができません。
小さな粒子は凝集反応でフロック化する
そこで、工業用の純水製造の前にこうした濁質を取り除くために「前処理」をします。この前処理は、飲み水としての水道水をつくる浄水場の処理と同様のいくつかのシステムを組み合わせています。その場合、砂ろ過器は5µm以下の微細粒子は前処理として凝集ろ過や加圧浮上分離を行って取り除きます。薬品処理を行う凝集反応槽では、5µm以下の微粒子や1µm以下のコロイド物質を水酸化アルミニウムで凝集させます。水中に存在する粒子はマイナスに、水酸化アルミニウムはプラスに荷電しているため、両者が混合されると荷電中和が起き凝集フロックと呼ばれる塊が形成されるのです。凝集反応後、沈殿・浮上・ろ過などの分離操作が行われます。また加圧浮上装置では、水に圧力を加えて空気を溶解させた後、大気圧に開放・減圧することで大量の微細気泡粒子やコロイド物質を付着させて、懸濁物質を浮上・分離させ、分離水はろ過処理が行われます。どのような前処理を採用するかは、原水の懸濁物質の濃度により決められます。
用語解説
コロイド物質
非常に微細な固体、または巨大分子であり、光学顕微鏡では見えず、通常のろ紙は通過する微細な物質。
CHECK POINT!
- 濁質を取り除くために純水製造の前には前処理をします。
- 前処理の方法は、原水の懸濁物質の濃度によって決められています。
出典:よくわかる水処理技術(株式会社日本実業出版社発行)
解説者
栗田工業株式会社
坂倉徹