ボイラで発生する障害 ースケール障害一
ボイラ・スチームカルシウムやマグネシウムなどの硬度成分がボイラ内に持ち込まれると、ボイラ水中では温度上昇による溶解度の低下と濃縮による濃度上昇によって不溶性の固形物が生じます。そして、その一部はスラッジとしてボイラ内に堆積、あるいはスケールとしてボイラ管内壁に付着(特に伝熱面では濃縮度が高くスケール化が促進)します。今回の水処理教室では、スケールの発生要因とスケール障害を防止するための対策について解説します。
解説
ボイラにスケールが発生すると、熱効率の低下によるエネルギーロスや、スケール付着部分の過熱によるボイラの膨出・破裂などが発生する場合があります。
スケールはボイラの材質である鋼などに比べ、熱伝導率が極端に低いため、ボイラ燃焼室からボイラ水への熱伝導が阻害され、熱効率が悪くなり、エネルギーロスにつながります。また、蒸発管等の伝熱部のスケール付着部分が過熱されて、鋼の機械的強度が低下してしまい、蒸発管の割れや噴破による水もれに至ることがあります。
スケール障害を防止するには
スケール障害を防止するには3つのことが大切です。
① スケール成分を持ち込まない
・ 軟水器の管理
硬度指示薬を使用して人間が硬度リークの有無を確認します。または、硬度リークセンサーなどで硬度リークを常時監視します。
・ ドレン(復水)の水質管理
回収する復水に硬度成分の混入がないか、また、腐食生成物である鉄が多く含まれていないか水質分析します。分析の結果によっては、復水の回収の停止やろ過処理を行う必要性があります。
② 入ったものは分散してボイラ外へ排出
・ 濃縮管理の最適化
濃縮管理の最適化を行い、ボイラ水中の硬度成分・シリカ・鉄の過剰濃縮の防止が必要です。
・ 薬注管理の最適化
薬注管理の最適化を行い、アルカリ濃度、スケール防止剤濃度の適正制御を行うことが必要です。
③ スケールが付着してしまった場合
スケール除去剤や酸洗浄剤などのスケールの厚さに合わせた薬品処理を行うことが必要です。また、スケール除去機能を持つボイラ清缶剤を使用することも有効です。
CHECK POINT!
- 清缶剤、スケール防止剤を使用していても短時間の硬度リークなどによって、スケールが伝熱面に付着する場合があります。ボイラ効率の悪化や燃料使用量の増加、ボイラの管理温度や排ガス温度の上昇がないか確認しましょう。また、定期的にボイラの中を内視鏡観察することをおすすめします。
出典:ボイラの水処理【低圧ボイラ編】(栗田工業株式会社発行)
解説者
栗田工業株式会社
梶原 瑛