No.068

ボイラの水処理を行う必要性

ボイラ・スチーム

ボイラで適切な水処理を行わなかった場合、腐食障害やスケール障害、キャリーオーバー障害などが発生し、ボイラプラントの停止やエネルギーロスを引き起こす場合があります。今回の水処理教室では、ボイラプラントを安全かつ効率的に運転するための処理方法等について解説いたします。


KCRセンター田村浩博

解説者

栗田工業株式会社

田村浩博

一般的に、ボイラに使用する原水(河川水、地下水、工業用水、水道水など)の中には、カルシウムイオン(Ca2+)、マグネシウムイオン(Mg2+)ならびにシリカ(SiO2)などのスケール障害の原因となる成分や、溶存酸素(O2)などの腐食障害の原因となる成分など、様々な物質が溶解しています。また、塩類濃度の高い水や油脂分が混入した水はキャリーオーバー障害の原因になります。これらの障害を防止するため、それぞれのボイラにあった最適な水処理を行う必要があります。

日常の水質管理

ボイラプラントを安全かつ効率的に運転するためには、機械的処理や化学的処理を行うと同時に、常にボイラ水の水質が最適な状態に維持されるよう、日常的に水質を管理することが大切です。ボイラの管理は、まず、ボイラの型式、圧力、補給水種、運転条件などにより、給水およびボイラ水の水質管理目標値を設定することから始まります。次に、目標水質を維持するための水処理方式や、最適な処理薬品とその添加量、ブロー率などを決定します。その後も、定期的な水質分析や、ボイラの開缶調査などにより、適時、水処理方式や水質管理目標値、処理薬品と添加量、ブロー率等の見直しを行うことが大切です。

物質名 障害の現象 対策
硬度成分
(Ca2+、Mg2+)
・ドラム内面や伝熱面でスケール化する
・ボイラ効率が低下し、燃料費が増大する
・蒸発管の閉塞、膨出、破裂に至る場合がある

・軟水器の使用
・清缶剤の使用
・分散剤の使用

シリカ
(SiO2)
・脱塩処理
・清缶剤の使用
・分散剤の使用
・ボイラ水の濃縮管理
酸消費量pH4.8成分
(HCO3
・熱分解によりCO2が発生し、復水系統のpHが下がり腐食が進む
・ボイラ内で熱分解し、アルカリ過多となる
・清缶剤の使用
・ボイラ水の濃縮管理
・復水系防食材の使用

(Fe)
・給水系、蒸気、復水系およびボイラ本体の腐食原因となる ・分散剤の使用
・凝集沈殿処理
・曝気ろ過処理
溶存ガス
(O2、CO2)
・イオン交換樹脂の性能を劣化させる
・ボイラ内での二次腐食の発生原因になる
・脱酸素材の使用
・復水系防食材の使用
・脱気処理
蒸発残留物 ・キャリーオーバーの原因となる
・イオン交換樹脂を汚染する
・ボイラ内で沈積し、スケールの原因となる
・ボイラ水の濃縮管理
・ろ過処理
・凝集沈殿処理
油脂成分 ・キャリーオーバーの原因となる
・伝熱面でスケール化する
・活性炭ろ過処理
・浮上分離処理

 

CHECK POINT!

  • ボイラの高性能化が進み、高効率で熱負荷の高いボイラが多くなっています。このようなボイラは十分な水処理をしないと障害が発生する可能性が高くなります。

出典:ボイラの水処理【低圧ボイラ編】(栗田工業株式会社発行)

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