ボイラで発生する腐食障害とは
ボイラ・スチーム低圧ボイラの腐食の要因として、pH、酸素や二酸化炭素などの溶存ガス、溶解している塩類の種類や濃度、温度、流速などが挙げられます。その中でも、pHと溶存ガスによる腐食が最も多く発生します。腐食障害が起きてしまうと、蒸発管・水管の穴あきによる水漏れやドレン(復水)配管の穴あきによる蒸気や水の漏れが起こる恐れがあり、最悪の場合ボイラの運転停止につながってしまいます。今回の水処理教室では、ボイラにおける腐食の発生要因と腐食障害を防止するための対策を解説します。
解説
ボイラの腐食障害が起きる設備と障害の要因は以下が挙げられます。
① 低圧ボイラの給水系統の腐食
腐食箇所としてエコノマイザやブロー装置の熱交換器の給水側が挙げられます。これらの設備の給水側はほぼ密閉系のため溶存酸素を系外に排出しにくいことに加え、給水温度が上昇すると、腐食速度が大きくなり、腐食が顕著になります。
② 低圧ボイラ本体の腐食
低圧ボイラ本体の腐食の要因としては、低pHや溶存酸素、腐食性塩類、腐食生成物の持ち込みなどがあります。
③ 低圧ボイラの蒸気・復水系統の腐食
給水(軟水)中のアルカリ成分である炭酸水素塩は、ボイラ内で熱分解し、pHを上げる成分を生成する一方で、二酸化炭素を発生させます。発生した二酸化炭素は蒸気とともに蒸気・復水系統に移行し、復水に溶け込むことで炭酸となります。復水は、蒸留水と同じく、不純物が少なく緩衝作用に乏しいため、炭酸のような弱酸であってもpHが簡単に下がってしまい、腐食の発生原因となります。
腐食障害対策
低圧ボイラの腐食を防止するためには以下の対策が必要です。
① 低圧ボイラの給水系の腐食対策
・溶存酸素の除去と材質の変更
給水系の腐食対策をするには、溶存酸素の除去やステンレス鋼などの耐食性材質に変更するなどの対策が必要です。
② 低圧ボイラ本体の腐食対策
・適切なpHの維持
ボイラ水のような高温状態においては、pHを11.0~12.0に維持することで鋼材の腐食を最小にすることができます。従って、適切なブローを行って塩類の濃度を管理し、同時に清缶剤を使用して不足するアルカリを補い、ボイラ水のpHを適切に維持することが大切です。
・溶存酸素の除去
給水中の溶存酸素を除去するには、脱気器により機械的に除去する方法と、脱酸素剤により化学的に除去する方法があります。溶存酸素の除去を行うことでボイラ缶内、蒸気・復水系の溶存酸素による腐食の防止につながります。
※水質管理については、JIS B 8223:2021「ボイラの給水,ボイラ水及び蒸気の質」に標準値が規定されています。
多管式特殊循環ボイラーの給水とボイラー水のJIS水質基準
a) カルシウム及びマグネシウム試験方法のうち、適用した試験方法(JIS B 8224参照)の定量下限値から硬度を算出したとき、その値より低い値とする。
出所) 一般財団法人 日本規格協会
③ 低圧ボイラの蒸気・復水系統の腐食対策
・中和性アミンによる防食
中和性アミンを使用することで、復水のpHを上昇させます。pHを上昇させることにより、蒸気・復水系での炭酸による腐食を抑制することができます(目標pH7~9)。
・皮膜性アミンによる防食
皮膜性アミンは、配管の表面に撥水性の皮膜を形成します。水中に含まれる溶存酸素や炭酸との接触をさせない事で蒸気・復水配管の腐食を抑制することができます。
用語解説
エコノマイザ
排ガスの余熱を利用して給水を予熱する装置。
燃料の節約、ボイラ効率の向上ができます。
CHECK POINT!
- 近年、省エネルギー・節水の観点から復水をボイラ給水として回収するケースが多いが蒸気・復水配管で腐食対策が不十分であると、腐食による穴あきが発生し、蒸気や復水のもれや、腐食生成物がボイラ内に持ち込まれスケール付着の原因ともなっています。炭酸を含み、低pHとなった復水の回収によって、給水系統でもpHの低下と温度の上昇による腐食が発生する場合があります。
出典:ボイラの水処理【低圧ボイラ編】(栗田工業株式会社発行)
解説者
栗田工業株式会社
梶原 瑛