No.076

ボイラで発生する障害 ーキャリーオーバ障害一

ボイラ・スチーム

ボイラにおけるキャリーオーバとは、ボイラ水中に溶解している塩類などがボイラ水の飛沫とともに蒸気の流れに伴って蒸気系統に移行してしまう現象です。今回の水処理教室では、キャリーオーバの種類に加えて、発生する原因と対策を解説します。


KCRセンター梶原瑛

解説者

栗田工業株式会社

梶原 瑛

解説

ボイラ内でキャリーオーバが発生してしまうと、ボイラ水の飛沫の混入によって蒸気純度が低下して、蒸気を直接製品と接触させる使用において製品の品質低下を起こします。また過熱器や蒸気タービンを有するボイラでは、塩類等の濃縮によるスケール付着や腐食により、過熱器の膨出、破裂や蒸気タービンの破損事故にまで発展する場合があります。

キャリーオーバ現象は、次のように分類できます。
① フォーミング
ドラム水面に発生した泡が増加してドラム内全体に広がり、泡や飛沫(ボイラ水)が蒸気に混入する現象です。
② プライミング
蒸気負荷が急増した場合にボイラの内圧が低下し、ボイラ水中で多量の気泡が発生してボイラ水の水位を押し上げ、ボイラ水が蒸気側へ移行する現象です。

 キャリオーバ発生

時のボイラ内の状況イラスト

 

また、キャリーオーバが発生する一般的な原因として、以下が挙げられます。
① ボイラ薬品の過剰注入やボイラ水の過剰濃縮など水質管理の不備
② ボイラ給水への油脂類などの混入
③ 汽水分離器の設計不良や整備不良など機械的なトラブル
④ ドラム水位の設定不良や運転管理の不備

キャリーオーバ障害対策

キャリーオーバを防止するためには、以下のような対策が必要となります。
① 薬注量やブロー量の最適化
ボイラ水中の塩類濃度が高くなれば、キャリーオーバを起こしやすくなりますので、適正な薬注量やブローにより常にボイラ水の塩類濃度(電気伝導率を指標に管理する)を適正に維持する必要があります。
② 油脂類等の混入防止
油脂類は通常は給水中には存在しませんが、まれに工場のプロセス側で使用している油脂類などが回収したドレン(復水)からボイラ水に混入する場合があり、その際は混入を防止する措置を取る必要があります。
③ 汽水分離器(ミストセパレータ)の点検
ボイラ水に油脂の混入がなく、塩類濃度も高くないのにキャリーオーバが発生する場合には、汽水分離器が不良な可能性があるので、点検し、必要があれば修理や改造を施す必要があります。またはミストセパレータを別途増設する方法もあります。
④ 運転条件の適正化
ボイラの運転水位が適正かを確認するとともに、蒸気負荷の大きな変動がないかを確認する必要があります。アキュムレータ(蒸気流量の急な変動を抑制し、ボイラ負荷を一定に保つ装置)を設置するなどしてキャリーオーバを防止する方法もあります。

CHECK POINT!

  • キャリーオーバしているかの判断として、ボイラから出た直後の蒸気を凝縮させた復水の電気伝導率あるいはpHを測定することで、キャリーオーバの発生を確認することができます。特に小型貫流ボイラは丸ボイラや水管ボイラに比べキャリーオーバの発生が多い傾向にあり注意が必要です。

出典:ボイラの水処理【低圧ボイラ編】(栗田工業株式会社発行)

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