冷却水系で発生する障害の種類 ―腐食障害―
冷却水・冷凍機腐食障害は、金属が水と酸素の存在下でさびとなる事、それにより配管などの厚みが薄くなる事に起因して発生します。冷却水系を構成する熱交換器や配管などが腐食すると、設備寿命の低下や補修費用の発生、漏水等による設備の運転停止など、多大な損失につながります。今回の水処理教室では、冷却水系における代表的な障害の一つ「腐食障害」について、腐食の反応機構や対策の考え方を解説します。
解説
冷却水系を構成する熱交換器や配管には、鉄・銅・ステンレスなどが良く使われます。冷却水中におけるこれら金属の腐食反応は、アノード(陽極)における金属の溶出と、カソード(陰極)における電子(アノードで発生)の反応という電気化学的な反応と考えられています。以下に鉄の腐食モデルを示します。

この反応が金属の表面全体でほぼ同一速度(単位: mdd(mg/(dm2・day))、mm/yearなど)で発生する腐食形態を全面(均一)腐食、局部的に発生する腐食形態を局部腐食といいます。一般的に局部腐食のほうが、短期間のうちに水漏れ等のトラブルにつながりやすく、注意が必要な腐食形態です。スライムやスケールなどが付着し、表面状態が不均ーになると、局部腐食になりやすくなります。
腐食障害対策
腐食を抑制することは、上記の反応を抑制するということです。例えば、脱酸素処理や酸素低減処理は、反応に関与する酸素を取り除くことで反応を抑制します。また、防錆(ぼうせい)塗装は、水と金属の接触を妨げ腐食反応を抑制します。薬品による腐食の抑制は、水と金属の間に腐食反応の抵抗となる膜を形成し、腐食の速度を抑える方法です。この膜は、薬品の成分等が沈殿して形成されるタイプや、酸化鉄等の酸化被膜の生成を促進するタイプなどがあります。
用語解説
mdd(mg/(dm2・day))
10cm×10cmの金属表面において、腐食によって1日あたり何ミリグラムの金属が溶出したかを示す値。一般に何も処理していない水系における炭素鋼の腐食速度は50~150mdd程度となる。
CHECK POINT!
- 金属表面が汚れていると防食剤の効果が十分に発揮されないため、スライム防止処理やブローにより循環水中のスラッジ成分を系外に排出することも重要です。
解説者
栗田工業株式会社
梶原 瑛