No.069

冷却水の水処理を行う必要性

冷却水・冷凍機

産業における冷却プロセスや空調設備には、冷却用の水(冷却水)をよく使います。冷却水の系統は、水に起因する各種障害が発生するので、効率よく、安定して稼働させるためには、水処理薬品による冷却水の処理が効果的です。今回は、冷却水の水処理によって得られるメリット、水処理薬品を使用する上で重要なポイント等を解説します。


KCRセンター梶原瑛

解説者

栗田工業株式会社

梶原 瑛

解説

冷却水は循環再利用されることが多く、冷却塔、配管、各冷却設備や冷凍機などの熱交換器を循環し、熱を吸収・運搬・放熱します。循環している冷却水を無処理のまま運転していると、冷却水系の3大障害(「腐食障害」「スライム障害」「スケール障害」)やレジオネラ症の原因となる「レジオネラ属菌」等が発生する事があります。その影響から、設備の性能低下や突発的な運転停止につながることがあります。場合によっては工場の操業が停止し、多大な損害が発生することもあります。これらのリスクを未然に防止するためには 、水質を適切に管理することに加えて、対象冷却水系の運転状況や、各機器の材質に応じた適切な水処理薬品を使用することが効果的です。3大障害とレジオネラ症についてはこれから個別に説明します。

水処理薬品を使用するメリット

水処理薬品を使用するメリットとして、以下が挙げられます。
・ 各種障害による設備の性能低下や突発的な運転停止リスクを軽減
・ 熱交換効率の維持によるエネルギーロスの防止
・ 系内清浄度の維持による洗浄作業の軽減
・ 高濃縮運転による節水(補給水・ブロー排水量の削減)
・ 冷却水系の衛生管理による健康リスクの軽減

用語解説

冷却水

流体(液体あるいは気体)を間接的に、あるいは固体を直接的に冷却する目的で使用される水のこと。

CHECK POINT!

  • 水を循環利用し、また蒸発によって水の濃縮が生じる開放循環冷却水系は、最も障害が発生しやすい冷却水系です。

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