水処理技術のキーワード「BOD」
一般事項「生物化学的酸素要求量」について説明いたします。水中の有機物質を好気性微生物が分解する時に、水1リットルあたり何mgの酸素が必要なのかを表した数値が生物化学的酸素要求量(BOD)です。主に河川の水質を表す指標として古くから使われてきました。その測定方法などについて解説いたします。
解説
好気性微生物が水中の汚染物質である有機物質を酸化・分解するときには、酸素が必要です。生物化学的酸素要求量(Biochemical Oxygen Demand:BOD)は、その酸化・分解作用のために水1リットルあたり何mgの酸素が必要かを数字で表したものです。汚染物質が多ければ酸素をより消費するため、BOD値は大きくなります。BODは、検水(検査する水)の5日間の酸素要求量(BOD5)で表すのが一般的です。検査期間をやや長めの5日間に設定した理由は、たとえば有機物が炭水化物である場合と窒素系物質である場合などでは酸化・分解反応の進行速度が違ってきますが、5日あればほぼ分解反応が終了しているとみなすことができるためです。ちなみに5日間というのは、イギリスのテムズ川の水が上流から下流まで流れるのに要する時間だといわれています。有機性物質が海に到達するまでに、自然浄化にどのくらい酸素が求められるかを知るという観点から、イギリスで5日間のBODという指標が最初に用いられ、これが次第に世界的に普及したという経緯があります。
BOD値に影響を与える物質
BODが高いとDO(溶存酸素)が足りなくなります。温度にもよりますが、平均的な河川のDOは8mg/L以下であり、BODが10mg/L以上になるとDOが消費されつくしてしまい、悪臭が発生する場合があります。なおBODは、微生物によって酸化・分解されやすい有機物を表しているもので、酸化・分解されにくい物質は測定値の中に入ってきません。たとえば5日間過ぎても分解が進むような有機物が含まれる場合は、実際の有機物量はBOD5の測定値より高くなります。また、検水中に微生物に対して有毒な物質が含まれると、微生物の働き(生物活性)が悪くなり、実際よりも低い値となるので注意が必要です。
用語解説
酸化・分解
水中の有機汚染物質は、微生物の増殖反応のエネルギー源として利用され(酸化)、最終的には炭酸ガスと水に酸化・分解される。
CHECK POINT!
- 水中の有機物質を好気性微生物が分解する時に必要な酸素量を表したのが生物化学的酸素要求量(BOD)です。
- 汚染物質が多ければ、BOD値は大きくなります。
出典:よくわかる水処理技術(株式会社日本実業出版社発行)
解説者
栗田工業株式会社
若田政己