No.048

省エネルギー型の多重円板脱水機

排水 汚泥処理

「省エネルギー型の多重円板脱水機」についてお話いたします。多重円板脱水機は、加圧や真空を必要としない省エネルギー型の脱水機です。薄い円板とスペーサーを加えて並べた筒状のろ体を上下にいくつも配置した構造になっており、大きなろ過面積を確保できるのが特徴です。その装置の特徴について解説いたします。


解説

多重円板脱水機は、薄い円板とスペーサーを組み合わせて並べた筒状のろ体をすき間をあけて上下にいくつも配置した構造となっています。そしてこのろ体を駆動装置で一定方向に回転させることで、汚泥が運ばれるうちに脱水が行われます。ろ過は、幅広のろ体の間を通して行われるため、大きなろ過面積を確保できるのが特徴となっています。またこの場合は脱水は、隣り合った薄い円板とスペーサーの間から水だけが通過して落ちるという重力作用が主体となるため、加圧や真空を必要としない省エネルギー型の脱水機です。

回転するろ過面から効率的に排水

この装置を使った実際の脱水では、まず処理する汚泥を凝集槽で凝集剤と混合することで、完全にフロック化しなくてはなりません。ろ布などを使用せずに、円板のすき間から水を排出するという構造上、フロック化が不完全だと、ろ液とともに汚泥が流出する恐れがあるからです。こうして前処理が行われた汚泥は、脱水機本体に供給されますが、最初に重力脱水部で水が下に排出され、汚泥は徐々に濃縮されながら移動していきます。そして脱水部まで運ばれると今度は、次第にすき間が狭くなる上下のろ体のテーパー状の配置によって圧縮脱水が行われます。また上下のろ体は、入り口と出口で回転数に差をもたせているため、汚泥はかき混ぜられるような状態で、さらに脱水ろ過が促進されます。こうして揉まれながら搾られた汚泥は出口に着くころには、脱水が終了しています。なお、ろ体は、円板とスペーサーが交互に噛み合うように配置され、常に回転しているため、ろ過面が連続的に再生されます。したがってろ過面での目詰まりはありませんが、ろ液中に含まれる固形物による閉塞防止を考慮して自動洗浄を行う機能が付いています。

多重円板脱水機のしくみ

用語解説

テーパー状

相対している面が、対称的に傾斜している円錐状の部分。

CHECK POINT!

  • 多重円板脱水機は、上下のろ体間に汚泥を通過させながら脱水を行います。
  • 大小の円板と小円板が回転しあうことでろ過面は連続再生されます。
KCRセンター佐藤禎一

解説者

栗田工業株式会社

佐藤禎一

出典:よくわかる水処理技術(株式会社日本実業出版社発行)

水処理教室バックナンバー

同じカテゴリの記事をご覧いただけます。

  • No.012 排水 凝集分離 用水・純水 前処理・ろ過

    凝集処理とは

    凝集とは、排水中に分散している懸濁物質が相互に引き合い、吸着・集合してより大きなかたまりとなり、沈降することをいいます。自然界に存在する微細粒子は、一般的にマイナスに帯電しているため、互いに反発して凝集しません。そこで、プラス荷電をもつ凝集剤を添加すると中和され凝集が起こります。その凝集の方法などについて解説します。

  • No.046 排水 汚泥処理

    汚泥処理とは? 汚泥、薬品、脱水機の種類

    汚泥の種類について、また汚泥処理がどのように行われているかを解説します。

  • No.061 排水 凝集分離

    難分解性シアン錯塩の凝集処理

    「ウェルクリン C‐200」を使用したシアンの処理方法についてお話いたします。シアン(CN)を含む排水は、メッキ工程から排出される排水と、鉄鋼工場のコークス製造排水に代表される炉内の化学反応で合成される排水の2種類に大別されます。前者はシアン化ナトリウム及び、鉄・亜鉛・ニッケル・銅・金・銀などの金属シアノ錯体が含まれ、後者は有機物や反応中間体を含みます。これら、幅広いシアン化合物を処理することが可能な「ウェルクリン C‐200」を使用したシアンの処理方法について解説いたします。

  • No.060 排水 凝集分離 排水その他

    置換法による重金属錯体の処理

    「置換法による重金属錯体の処理」についてお話いたします。排水中に含まれる重金属が他の種類の化合物と結合している状態を錯体といいます。その錯体の中でもキレートという安定した形を形成している場合は置換法を用います。その置換法や、その他の処理方法について解説いたします。

  • No.059 排水 凝集分離

    懸濁物質を沈降させて集める沈殿処理装置

    「沈殿処理装置」についてお話いたします。凝集処理を施し、粗大化した懸濁物質のうち、比重の大きなものは沈降させ固液分離します。この固液分離を効率化するため、沈降処理装置にはいろいろな種類があります。それぞれの仕組みを解説いたします。

  • No.058 排水 生物処理

    沈殿槽を省いた生物膜式活性汚泥法

    「生物膜式活性汚泥法」についてお話いたします。生物膜式活性汚泥法は、充填材に微生物を付着させる処理方法です。沈殿槽の小型化、もしくは省略により、排水処理設備の省スペース化が可能です。この方法には固定床方式と流動床方式があります。それぞれのしくみを解説いたします。

ログイン・ユーザー登録

水処理教室(動画版)の閲覧や製品カタログのダウンロードを
ご希望の方は、ログインまたはユーザー登録を行ってください。

WEBからのお問い合わせ

           

水処理に関するご相談や製品・サービスに関する
ご質問など、お気軽にお問い合わせください。