食物連鎖を利用した汚泥減容化技術
排水 生物処理 汚泥処理「食物連鎖を利用した汚泥減容化」についてお話いたします。活性汚泥法では、汚泥の主体である細菌をアメーバやゾウリ虫、ツリガネ虫などが捕食し、それらをワムシ類やミミズなどが食べるという一種の食物連鎖が生じています。この食物連鎖を利用した汚泥処理のしくみについて解説いたします。
解説
これまでいろいろな微生物による排水内の有機物処理を紹介してきましたが、今回は食物連鎖を利用した汚泥処理を紹介します。植物プランクトンを動物プランクトンが補食し、その動物プランクトンを二次消費者(魚など)が餌とし、魚を三次消費者である人間が食べるというつながりを食物連鎖と言います。これと同じことは活性汚泥法にも生じ、汚泥の主体である細菌をアメーバやゾウリ虫、ツリガネ虫などの原生動物が捕食し、それらをワムシ類やミミズなどの後生動物が食べるという一連の食物連鎖が生じています。この捕食作用によって、原生動物や後生動物の影響が大きいほど余剰汚泥の量は減容されます。
微生物の捕食作用で汚泥発生を低減
食物連鎖を利用した減容化を進めるには原生動物が補食しやすい菌体を多く含む汚泥を形成する必要があります。また原生動物は、活性汚泥の粘性物質までは補食しないため、菌体が固まらずに分散した状態の活性汚泥を形成させることが重要となります。その手段としては曝気槽を分割し、前段の曝気槽内にスポンジなどの流動充填材を投入し、高負荷運転を行うことで分散菌体(分散汚泥)を増殖させます。この分散菌体をツリガネ虫やゾウリ虫などの繊毛虫類が生育している第一微小動物槽で補食させながら分散汚泥をフロック化させて、沈降性のいい汚泥を形成させます。そしてこれをワムシ類や環形動物などがいる第二微小動物槽に入れ、原生動物やフロック内の菌体を補食させることで汚泥の減容化を行います。これら一連の工程で余剰汚泥の発生量は一般の活性汚泥法に比べて50~80%が低減されます。
用語解説
余剰汚泥
活性汚泥処理において、有機物処理で増殖した微生物の一部を曝気槽に戻して活性汚泥処理させますが、そうした必要な微生物を差し引いて残した汚泥のことをいう。
CHECK POINT!
- 食べる、食べられるの関係がつながっていることを食物連鎖といいます。
出典:よくわかる水処理技術(株式会社日本実業出版社発行)
解説者
栗田工業株式会社
小川晋平