バルキングの効果的な防止策
排水 生物処理「バルキングの効果的な防止策」についてお話いたします。活性汚泥法が排水や下水処理に採用されてから約半世紀経ちますが、バルキングを完全に防止することは非常に困難です。その要因はバルキングに関与する要因が多いことがあげられます。今回は、その中でも効果が高いといわれる対策について解説いたします。
解説
活性汚泥法が、多くの排水や下水処理に採用されてから約半世紀が経ちますが、いまだにバルキングを完全に防止することは困難です。その原因はバルキングに関与する要因が多く、また排水の組成や処理法、運転管理によってその状況が大きく異なるからです。バルキングに対しては、明確で効果的な対応は難しいのですが、糸状性バルキングの防止策として、二段活性汚泥法(多段活性汚泥法)と部分嫌気(擬似嫌気)を組み込んだ活性汚泥法が開発され、効果が得られつつあります。糸状細菌の中のスファエロチルスやタイプ1701などは、処理水が悪化するほどの高負荷(菌体に過剰な有機物を処理させること)や、汚泥が解体するほどの低負荷(有機物が少ない状態)では増殖しにくい特性をもっていることから、曝気槽を二段または多段に分割して、前段の曝気槽を高い負荷で、後段の曝気槽を低い負荷で運転することによって、これらの増殖を防止することが可能です。また糸状細菌のうちでタイプ021N、タイプ1851などは、嫌気槽と好気槽(曝気槽)をもつ多段の反応槽を用いた部分嫌気(擬似嫌気)を組み込むと、異常増殖が防止された例が報告されています。

対策がより困難な非糸状性バルキング
いっぽう非糸状性バルキングの防止は、糸状性バルキングの防止より困難とされています。その原因は、発生要因が明確でないことによります。なお高粘性バルキングでは、活性汚泥が粘性をもった中間代謝物で蓄積されていることが多いため、負荷量やDOや栄養源など、運転環境条件を最適に調整する必要があります。また活性汚泥中の灰分の割合を高め、比重の重いフロックを形成させることも効果があります。
用語解説
部分嫌気(疑似嫌気)
曝気槽の一部を使って、散気しない部分を作り出し、嫌気状態での処理を行う方法。バルキング状態になったときの改善手法の一つ。
CHECK POINT!
- 糸状細菌によるバルキングへの対策として、二段活性汚泥法が効果をあげています。
- 非糸状性バルキングの防止は、糸状性バルキング防止より困難です。
出典:よくわかる水処理技術(株式会社日本実業出版社発行)
解説者
栗田工業株式会社
坂倉徹