バルキングの種類とその原因
排水 生物処理「バルキングの種類とその原因」についてお話いたします。活性汚泥法や生物脱窒法では、後段の沈殿槽で固液分離します。しかし、十分に固液分離が進まないバルキングという状態が発生すると、汚泥が沈殿槽から流出するキャリーオーバーが発生します。ここでは、そのバルキングの種類と発生原因などを解説いたします。
解説
活性汚泥法や生物脱窒法などでは、後段の沈殿槽で固液分離をして処理水を得ます。ところが、ここで十分な固液分離ができないバルキングという状態が発生すると、汚泥が沈殿槽から流出するキャリーオーバーが発生します。バルキングは、活性汚泥のフロックに糸状に増殖する糸状性微生物の割合が多くなり、フロック全体が綿状となる糸状性バルキングと、汚泥の粘性増加やフロックの凝集性が低下して微細なフロックとなる非糸状性バルキングに大別されます。
活性汚泥処理が不能となるバルキング
糸状性バルキングを引き起こす細菌は、スファエロチルス、チオトリクス、タイプ1701などで、これらの細菌の増殖には、曝気槽の負荷量の増加や溶存酸素の不足、窒素やリンなどの栄養源の不足、排水の組成など、多くの要因が関係します。また時にはノカルデア、マイクロスリックスなど放線菌の一種が異常増殖し、曝気槽が泡で覆われ、泡とともに多量の汚泥が沈殿槽から流出することもあります。さらに曝気槽のpHを酸性側で運転すると、排水組成によっては、カビや酵母が増殖することもあります。いっぽう非糸状性バルキングは、糸状性微生物の発生が少ない状態で、汚泥の沈降性が不十分である状態を総称しています。その中で細菌の生成する粘性物質が多くなり、フロックの粘性が異常に高まる高粘度バルキングと、低負荷や過負荷によってフロックが分散・解体して、微細な汚泥となる分散型バルキングが多く発生します。高粘度バルキングの原因は明確ではありませんが、排水組成が糖類主体で、窒素、リンが不足している場合に発生しやすく、排水中の無機成分(カルシウムや鉄塩などの灰分)の含有量もその要因となっています。
用語解説
低負荷・過負荷
設定された状況より低い場合を低負荷、高い場合を過負荷と呼ぶ。
CHECK POINT!
- 曝気槽の負荷量が増加したり、酸素や窒素、リンなどが不足するとバルキングが発生します。
出典:よくわかる水処理技術(株式会社日本実業出版社発行)
解説者
栗田工業株式会社
坂倉徹