No.034

リンを含んだ排水の処理法(2)-MAP法

排水 排水その他

「リンを含んだ排水の処理方法-MAP法」についてお話いたします。工場や下水処理などで処理されたリンは、これまで汚泥と共に捨てられていました。しかし、リン資源の枯渇が叫ばれる中、その有効利用を目的としてMAP法が開発されました。今回は、その処理方法を解説いたします。


解説

工場や下水処理などで処理されたリンは、これまでは汚泥とともに埋め立てられてきました。しかしリン資源の枯渇が危惧され、その効率的な回収・再利用システムの確立が求められています。そこで登場したのが(Magnesium Ammonium Phosphate:リン酸マグネシウムアンモニウム)法です。MAP法はもともと畜舎などの排水で不溶解性のリン酸塩が配管をふさぐ現象の対策として研究されました。家畜の飼料には高濃度のリン酸イオン、アンモニウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオンなどが含まれていますが、これらの物質は糞尿とともに排出され、施設のトラブルを引き起こす原因になります。そこで微生物を利用したリン除去の前の技術としてMAP法が開発されました。たとえば、下水処理場で汚泥を脱水した後の水のように高濃度のリンを含有する水はそのまま放流できず、リンを完全に除去する必要があります。そのときにMAP法は、極めて有効な手段といえます。

回収したリンは肥料として活用

MAP法の反応の原理は、過飽和溶液中にその物質の種を入れると表面に結晶が析出して成長する原理に基づいています。具体的には、リン酸を含む排水にリン酸イオン、アンモニウムイオン、マグネシウムイオン及び種晶を入れてpHをアルカリに調整します。すると排水中のリンはリン酸マグネシウムアンモニウムの結晶として成長するためこれを回収することができ、生成物はリン酸40%、アンモニア7%、マグネシウム10%を含む肥料として利用できます。MAP法は、造粒現象によって水中のリン酸イオンを除去するため微小結晶の析出を制御でき、また凝集沈殿法のように沈殿汚泥を発生することもなくリン除去ができる点で画期的な方法といえます。

下水処理場でのリン処理に使われるMAP法

用語解説

過飽和溶液

ある物質がある条件下で、溶液中に飽和溶解度以上に溶解している状態。

CHECK POINT!

  • リンの効果的な回収・利用システムを目指して登場したのがMAP法です。
  • 回収したリンは、肥料として再利用できます。
KCRセンター小川晋平

解説者

栗田工業株式会社

小川晋平

出典:よくわかる水処理技術(株式会社日本実業出版社発行)

水処理教室バックナンバー

同じカテゴリの記事をご覧いただけます。

  • No.012 排水 凝集分離 用水・純水 前処理・ろ過

    凝集処理とは

    凝集とは、排水中に分散している懸濁物質が相互に引き合い、吸着・集合してより大きなかたまりとなり、沈降することをいいます。自然界に存在する微細粒子は、一般的にマイナスに帯電しているため、互いに反発して凝集しません。そこで、プラス荷電をもつ凝集剤を添加すると中和され凝集が起こります。その凝集の方法などについて解説します。

  • No.046 排水 汚泥処理

    汚泥処理とは? 汚泥、薬品、脱水機の種類

    汚泥の種類について、また汚泥処理がどのように行われているかを解説します。

  • No.061 排水 凝集分離

    難分解性シアン錯塩の凝集処理

    「ウェルクリン C‐200」を使用したシアンの処理方法についてお話いたします。シアン(CN)を含む排水は、メッキ工程から排出される排水と、鉄鋼工場のコークス製造排水に代表される炉内の化学反応で合成される排水の2種類に大別されます。前者はシアン化ナトリウム及び、鉄・亜鉛・ニッケル・銅・金・銀などの金属シアノ錯体が含まれ、後者は有機物や反応中間体を含みます。これら、幅広いシアン化合物を処理することが可能な「ウェルクリン C‐200」を使用したシアンの処理方法について解説いたします。

  • No.060 排水 凝集分離 排水その他

    置換法による重金属錯体の処理

    「置換法による重金属錯体の処理」についてお話いたします。排水中に含まれる重金属が他の種類の化合物と結合している状態を錯体といいます。その錯体の中でもキレートという安定した形を形成している場合は置換法を用います。その置換法や、その他の処理方法について解説いたします。

  • No.059 排水 凝集分離

    懸濁物質を沈降させて集める沈殿処理装置

    「沈殿処理装置」についてお話いたします。凝集処理を施し、粗大化した懸濁物質のうち、比重の大きなものは沈降させ固液分離します。この固液分離を効率化するため、沈降処理装置にはいろいろな種類があります。それぞれの仕組みを解説いたします。

  • No.058 排水 生物処理

    沈殿槽を省いた生物膜式活性汚泥法

    「生物膜式活性汚泥法」についてお話いたします。生物膜式活性汚泥法は、充填材に微生物を付着させる処理方法です。沈殿槽の小型化、もしくは省略により、排水処理設備の省スペース化が可能です。この方法には固定床方式と流動床方式があります。それぞれのしくみを解説いたします。

ログイン・ユーザー登録

水処理教室(動画版)の閲覧や製品カタログのダウンロードを
ご希望の方は、ログインまたはユーザー登録を行ってください。

WEBからのお問い合わせ

水処理に関するご相談や製品・サービスに関する
ご質問など、お気軽にお問い合わせください。