No.029

水処理に欠かせないpH調整とは

排水 排水その他 用水・純水 用水・純水その他

「水処理に欠かせないpH調整」についてお話いたします。すべての水においてpHは大切な指標のひとつです。多くの水中生物、農作物にとって望ましいpHは5.8~8.6といわれ、排水基準値もこの値を採用しています。今回は、水処理にとって欠かせないpH調整について解説いたします。


KCRセンター小川晋平

解説者

栗田工業株式会社

小川晋平

解説

今回は水処理に欠かせないpH調整のお話をしましょう。すべての水域においてpHは非常に大切な指標の一つです。多くの水中生物、農作物にとって望ましい水のpHは5.8~8.6であるとされ、排水基準値もこの値を採用しています。このpHの調整は、放流水だけでなく、凝集・沈殿などの水処理を効果的に行うためにも重要な操作となります。

金属イオンの除去にはpHが影響する

中和とは、酸とアルカリを加えて中性の水にすることで、厳密に解釈すれば、常温において水素イオン濃度を10-7mol/L、すなわちpH値を7にすることです。一般に水中の中和の状態を見るときは、右のグラフのように酸またはアルカリの添加量を横軸にとって、試料溶液のpH値を縦軸として曲線を描く方法がとられます。この曲線を中和曲線といいますが、実際の排水の中和では、酸やアルカリ、さらに金属イオンなどが含まれているため、この中和曲線の形はそれぞれ異なってきます。金属イオンを含む排水は一般に酸性で、これにアルカリを加えてpHを上げていくと、金属イオンは水酸イオンと反応して水酸化物を生じます。これはpHを上げるにつれて水酸イオンの濃度が高くなり、金属イオンの溶解度が小さくなるためです。たとえば製鉄所や金属表面処理工場からの酸洗排水で第一鉄イオンを含む場合、pHを9~10まで上げないと十分除去されません。しかし空気を吹き込んで酸化第二鉄(3価の鉄)にすると、pH7付近で完全に除去されます。またシアンの塩素による分解ではpH10以上、六価クロムの亜硫酸塩による還元ではpH3以下でなければ反応が起きません。このように排水処理では、pH調整は極めて重要な操作なのです。

中和反応のしくみ

用語解説

排水基準値

環境基準を達成するため、排水に許容される汚染物質の濃度

CHECK POINT!

  • pHの調整は、凝集・沈殿などを効果的に行うための重要な操作です。
  • 金属イオンを含む排水のpHを上げていくと、水酸化物となって沈殿します。

出典:よくわかる水処理技術(株式会社日本実業出版社発行)

水処理教室バックナンバー

同じカテゴリの記事をご覧いただけます。

  • No.061 排水 凝集分離

    難分解性シアン錯塩の凝集処理

    「ウェルクリン C‐200」を使用したシアンの処理方法についてお話いたします。シアン(CN)を含む排水は、メッキ工程から排出される排水と、鉄鋼工場のコークス製造排水に代表される炉内の化学反応で合成される排水の2種類に大別されます。前者はシアン化ナトリウム及び、鉄・亜鉛・ニッケル・銅・金・銀などの金属シアノ錯体が含まれ、後者は有機物や反応中間体を含みます。これら、幅広いシアン化合物を処理することが可能な「ウェルクリン C‐200」を使用したシアンの処理方法について解説いたします。

  • No.060 排水 凝集分離 排水その他

    置換法による重金属錯体の処理

    「置換法による重金属錯体の処理」についてお話いたします。排水中に含まれる重金属が他の種類の化合物と結合している状態を錯体といいます。その錯体の中でもキレートという安定した形を形成している場合は置換法を用います。その置換法や、その他の処理方法について解説いたします。

  • No.059 排水 凝集分離

    懸濁物質を沈降させて集める沈殿処理装置

    「沈殿処理装置」についてお話いたします。凝集処理を施し、粗大化した懸濁物質のうち、比重の大きなものは沈降させ固液分離します。この固液分離を効率化するため、沈降処理装置にはいろいろな種類があります。それぞれの仕組みを解説いたします。

  • No.058 排水 生物処理

    沈殿槽を省いた生物膜式活性汚泥法

    「生物膜式活性汚泥法」についてお話いたします。生物膜式活性汚泥法は、充填材に微生物を付着させる処理方法です。沈殿槽の小型化、もしくは省略により、排水処理設備の省スペース化が可能です。この方法には固定床方式と流動床方式があります。それぞれのしくみを解説いたします。

  • No.057 排水 生物処理

    生物処理とは

    「生物処理」についてお話いたします。排水に含まれる有機物を微生物に分解させる方法を生物処理といいます。微生物は酸素が必要な好気性微生物と、酸素を必要としない嫌気性微生物に大きく分かれます。それぞれの微生物が有機物を分解するメカニズムについて解説いたします。

  • No.056 排水 排水その他

    汚染物質に応じた排水処理方法の選択

    「汚染物質に応じた排水処理方法」についてお話いたします。工場排水には油分や有機物、アンモニア、有害金属など、さまざまな汚染物質が含まれているため、複数の方法を組み合わせて処理することが必要になります。今回は汚染物質に応じた処理方法の概要について解説いたします。

ログイン・ユーザー登録

基礎学習動画の閲覧や製品カタログのダウンロードを
ご希望の方は、ログインまたはユーザー登録を行ってください。

WEBからのお問い合わせ

水処理に関するご相談やKCRセンターに関する
ご質問など、こちらからお気軽にお寄せください。