超純水をつくるための殺菌処理
用水・純水 純水・超純水栗「超純水をつくるための殺菌処理」についてお話いたします。菌は水中や大気中のあらゆるところに存在し、一度殺菌しても栄養となる有機物があると増殖します。そのため超純水製造システム内では、各段階で目的に応じた殺菌処理が徹底されています。その方法について解説いたします。
解説
超純水では、生菌の混入も大きな問題となります。菌体は、水中、大気中のあらゆるところに存在し、一度殺菌しても栄養となる有機物があると増殖します。そのため超純水製造システム内では、各段階でその目的に応じていろいろな殺菌方法が行われています。前処理では、次亜塩素酸ソーダを添加して殺菌します。ただ、この薬剤による残留塩素が、一次純水システム内で使用しているRO膜[逆浸透膜]やイオン交換樹脂の脱塩素材の劣化を引き起こしてしまいます。そこで一次純水システムの入口で、活性炭や還元剤として重亜硫酸ソーダを利用してこうした残留塩素を取り除いています。また一次純水システムでRO膜[逆浸透膜]処理をする場合は、その直前に紫外線殺菌装置(UVst)を設置して235nmの紫外線で菌体の核酸を破壊して死滅させることが多くあります。ただし紫外線殺菌装置の効力は一過性で持続性がないため、非塩素系の菌増殖抑制剤も注入します。サブシステムでは、殺菌装置として紫外線殺菌装置と紫外線酸化装置のいずれかが使われます。また殺菌ではありませんが、超純水を使用するユースポイントへの送水に当たっては、UF膜(ファイナルフィルター)が菌体を100%除菌します。
サブシステム全体の殺菌
サブシステムは、部材を交換する時に装置内が大気に開放されるため、必ず菌体が入ってきます。そこで対策として、全体の殺菌を実施します。この殺菌は、過酸化水素や医薬・食品で用いられる熱水殺菌を利用します。過酸化水素で殺菌する場合は、室温ならば1~2%、40℃の中温ならば0.1~0.3%濃度の過酸化水素をサブタンクに注入し、熱交換器、UV装置、ファイナルフィルター、送水配管を循環させ、ユースポイントまでのすべてを薬剤で浸します。
用語解説
菌増殖抑制剤
有機物が水中に微量でも溶解していると、それを利用して増殖する細菌、糸状菌(カビ)、藻類等の微生物が発生する。これらを抑制するために水に添加する薬品のこと。
CHECK POINT!
- 超純水では、生菌の混入も問題となります。
- システム内では、目的に応じていろいろな殺菌が行われます。
出典:よくわかる水処理技術(株式会社日本実業出版社発行)
解説者
栗田工業株式会社
池上徹