No.026

超純水をつくるための殺菌処理

用水・純水 純水・超純水

栗「超純水をつくるための殺菌処理」についてお話いたします。菌は水中や大気中のあらゆるところに存在し、一度殺菌しても栄養となる有機物があると増殖します。そのため超純水製造システム内では、各段階で目的に応じた殺菌処理が徹底されています。その方法について解説いたします。


KCRセンター池上徹

解説者

栗田工業株式会社

池上徹

解説

超純水では、生菌の混入も大きな問題となります。菌体は、水中、大気中のあらゆるところに存在し、一度殺菌しても栄養となる有機物があると増殖します。そのため超純水製造システム内では、各段階でその目的に応じていろいろな殺菌方法が行われています。前処理では、次亜塩素酸ソーダを添加して殺菌します。ただ、この薬剤による残留塩素が、一次純水システム内で使用しているRO膜[逆浸透膜]やイオン交換樹脂の脱塩素材の劣化を引き起こしてしまいます。そこで一次純水システムの入口で、活性炭や還元剤として重亜硫酸ソーダを利用してこうした残留塩素を取り除いています。また一次純水システムでRO膜[逆浸透膜]処理をする場合は、その直前に紫外線殺菌装置(UVst)を設置して235nmの紫外線で菌体の核酸を破壊して死滅させることが多くあります。ただし紫外線殺菌装置の効力は一過性で持続性がないため、非塩素系の菌増殖抑制剤も注入します。サブシステムでは、殺菌装置として紫外線殺菌装置と紫外線酸化装置のいずれかが使われます。また殺菌ではありませんが、超純水を使用するユースポイントへの送水に当たっては、UF膜(ファイナルフィルター)が菌体を100%除菌します。

サブシステム全体の殺菌

サブシステムは、部材を交換する時に装置内が大気に開放されるため、必ず菌体が入ってきます。そこで対策として、全体の殺菌を実施します。この殺菌は、過酸化水素や医薬・食品で用いられる熱水殺菌を利用します。過酸化水素で殺菌する場合は、室温ならば1~2%、40℃の中温ならば0.1~0.3%濃度の過酸化水素をサブタンクに注入し、熱交換器、UV装置、ファイナルフィルター、送水配管を循環させ、ユースポイントまでのすべてを薬剤で浸します。

サブシステムの殺菌工程

用語解説

菌増殖抑制剤

有機物が水中に微量でも溶解していると、それを利用して増殖する細菌、糸状菌(カビ)、藻類等の微生物が発生する。これらを抑制するために水に添加する薬品のこと。

CHECK POINT!

  • 超純水では、生菌の混入も問題となります。
  • システム内では、目的に応じていろいろな殺菌が行われます。

出典:よくわかる水処理技術(株式会社日本実業出版社発行)

水処理教室バックナンバー

同じカテゴリの記事をご覧いただけます。

  • No.004 用水・純水 純水・超純水 排水 排水その他

    イオン交換とは?イオン交換樹脂の吸着と再生について

    イオン交換やイオン交換樹脂再生の原理について解説します。

  • No.003 用水・純水 純水・超純水

    純水とは?その性質や製造方法について

    「純水」が果たす役割、その性質や用途・活用シーンから製造方法までを解説します。

  • No.055 用水・純水 前処理・ろ過

    ウイルスも取り除くUF膜

    「UF膜」についてお話いたします。UF膜は、MF膜よりも微細な孔を持ち、分子量5000~30万程度の高分子成分(たんぱく質やポリエチレングリコールなど)や、粒子径1~100nmのウイルス、エマルジョンなど小さな物質を除去することができます。その特徴と用途について解説いたします。

  • No.054 用水・純水 前処理・ろ過 純水・超純水

    幅広い分野で使われるMF膜

    「MF膜」についてお話いたします。MF膜は家庭用浄水器に使われています。また、災害時に飲料水を確保する緊急用ろ過器や工業用水の前処理ろ過のほか、超純水製造、医療用水製造の最終ろ過としても採用されています。このように幅広い分野で使われているMF膜のしくみと用途について解説いたします。

  • No.027 用水・純水 純水・超純水 排水 排水その他

    一度利用した超純水の回収・再利用方法

    「超純水の回収・再利用」についてお話いたします。一度使用した超純水を回収・再利用することは、節水対策として重要です。特に工場用水や水道水の取水制限、地下水の汲み上げ量制限によって使用水量を増やせない場合は有効です。その超純水の回収・再利用法を解説いたします。

  • No.025 用水・純水 純水・超純水

    超純水をつくるための有機物処理

    「超純水をつくるための有機物処理」についてお話いたします。超純水中には、微粒子や生菌、TOC(全有機炭素)、シリカなどが一定基準以下であることが求められます。特にTOCについては可能な限りゼロに近い状態まで除去するシステムが開発されています。そのTOCの処理方法について解説します。

ログイン・ユーザー登録

基礎学習動画の閲覧や製品カタログのダウンロードを
ご希望の方は、ログインまたはユーザー登録を行ってください。

WEBからのお問い合わせ

水処理に関するご相談やKCRセンターに関する
ご質問など、こちらからお気軽にお寄せください。