CaF2を効率的に回収する装置
排水 汚泥処理 凝集分離「半導体工場などでCaF2を効率的に回収する装置」についてお話いたします。半導体工場では、製造工程でフッ素化合物を含む溶液が多く使用されています。この排水を処理する時に大量の汚泥が排出されています。その汚泥を削減すると同時に、フッ素を再利用する装置について解説いたします。
解説
半導体工場では、その製造工程でフッ素化合物を含む溶液が洗浄用に多く使用されています。こうした排水は前回紹介したように、水酸化カルシウム塩などを用いた凝集沈殿法によって処理されていますが、その時に大量の汚泥、産業廃棄物を排出するという問題がありました。そこでこの汚泥を大幅に削減すると同時に、有用な資源であるフッ素を再利用する技術として、CaF2回収装置が開発されました。粒状の炭酸カルシウムとフッ素を含んだ排水とが反応することを利用して粒状のフッ化カルシウムにする方法です。具体的には、炭酸カルシウムを充填した反応塔に原水を通液すると、フッ素は炭酸イオンと置換反応し、CaF2として除去されます。この反応は、炭酸カルシウム粒子表面から層状に内部へと進行し、反応前の大きさ、形をかえずに粒子がすべてフッ化カルシウムとなります。
3塔構成でムダなくフッ素を回収
排水は、循環槽から粒状の炭酸カルシウム(CaCO3)を充填した反応槽を通りますが、一般的に反応槽は3塔設置されています。この場合、通水によってフッ化カルシウムにほぼ完全に置換した1塔目の充填物を抜き出し、新たに炭酸カルシウムを充填します。そして今度はこれを3塔目にします。つまり入れ替えたのちの通水は、入れ替え前の2塔目が1塔目、3塔目が2塔目の順になり、常に新しい炭酸カルシウム充填塔が最後段にくるため処理水の水質がよくなり、なおかつ最前段で回収されるフッ化カルシウムの純度も高くなるように工夫されています。こうして生成したフッ化カルシウムは、洗浄水で付着液を洗浄した後に抜き出します。このフッ化カルシウムは粒状であるため、水切りを行うだけで含水率は15%程度と極めて低く、凝集沈殿処理の場合に必要な汚泥の脱水が不要となり、従来に比べ汚泥発生量は約3分の1になります。
用語解説
循環槽
繰り返し使用される液体を貯留する水槽のこと。
CHECK POINT!
- フッ素処理の汚泥を削減して、資源の再利用を図るのがCaF2回収装置です。
- 3塔構成の反応槽で、フッ素をムダなく回収します。
出典:よくわかる水処理技術(株式会社日本実業出版社発行)
解説者
栗田工業株式会社
小川晋平