フッ素を含んだ排水処理の方法
排水 凝集分離「フッ素を含んだ排水の処理方法」についてお話いたします。フッ素を含む飲料水を長期間摂取すると歯に褐色のシミや白い斑点ができたり、慢性中毒症が起こる場合があります。そのためフッ素を一定の基準以下に処理しなければなりません。その処理方法であるフッ化カルシウム法などについて解説します。
解説
フッ素は、電子工業、ガラス加工工業、エッチング工程で多量に使用され、これらの工場から排出される排水に含まれます。フッ素はもともと自然界に広く存在する元素で、淡水中では0.1~0.2mg/L、海水では1.2~1.4mg/Lほどがフッ化物(F–)やケイフッ化物(SiF62-)の化合物の形で存在しています。しかし、フッ素を含む飲料水を長期摂取すると歯に褐色のシミや白い斑点が出る斑状歯の発生や骨格フッ素系中毒症の慢性中毒症が起こります。そのため我が国の排水基準では8mg/L、水道水基準では0.8mg/Lの水質基準が設定されています。フッ素を処理する方法として、最も一般的なものにフッ化カルシウム法があります。フッ素含有排水に消石灰、塩化カルシウムなどのカルシウム化合物を添加して、フッ化カルシウムとして沈殿させる方法です。
二段沈殿法でフッ素除去を完全に
フッ化カルシウム法の理論上の処理到達値は8mg/Lですが、実際の処理値は15~25mg/Lが一般的となってしまいます。その原因は、沈殿しにくいコロイド状のCaF2が発生するためです。そこでフッ素を8mg/L以下にするために、フッ素含有排水の処理では二段沈殿法が一般的となっています。一段目のフッ化カルシウム法に加えて二段目ではPACまたは硫酸バンドなどのアルミ塩を使用し、フッ素をアルミと反応させます。ただしこの場合、フッ素とアルミの化合物は再び水に溶ける可能性があるため、アルミニウムを過剰に添加することによってフッ素を水酸化アルミに吸着させて除去を完全なものとします。この方法では、重量比でアルミをフッ素の2倍以上にすればアルミ塩の添加量に応じて任意の値までフッ素を処理することができます。
用語解説
エッチング
金属等の表面を化学処理して溶解させること。エッチング工程は半導体の部品製造では不可欠の工程。
CHECK POINT!
- フッ素は、フッ化カルシウムの形にして沈殿させます。
- フッ素を含む排水の処理では、二段沈殿法が一般的です。
出典:よくわかる水処理技術(株式会社日本実業出版社発行)
解説者
栗田工業株式会社
池上徹