汚泥を高密度にして体積を減らすHDS法
排水 凝集分離 汚泥処理「汚泥を高密度にして体積を減らすHDS法」についてお話いたします。汚泥は埋め立てなど投棄処理しなければなりませんが、多量の水分を含んでいると体積も重量も大きく、搬送・投棄に大きな負担がかかります。その対策として開発されたHDS法について解説いたします。
解説
これまで紹介した排水処理は、処理に伴って多量の水分を含んだ汚泥が発生します。汚泥は埋め立てなど投棄処理しなければなりませんが、多量の水分を含み体積も重量も大きなままの汚泥を搬送・投棄することは、処分コストの点から経済的といえません。前回採り上げた重金属の水酸化物処理やフッ化カルシウム・リン酸カルシウムなどのカルシウム塩、リン酸鉄またはリン酸アルミなどの処理に用いられるHDS法についてここで説明します。HDSとはHigh Density Solidsの頭文字で、高密度の汚泥を生成させることで水分含有量を低下させる方法です。従来法に比べてHDS法の脱水ケーキ(脱水して固めた汚泥)は、含水率が50%前後に低下するため、処分量も5割前後減ることになります。
汚泥表面にさらに汚泥を析出させて高密度に
従来は、たとえばAとBを反応させA・Bの形の沈殿物を生成させる場合、それぞれを含む液体を混合させると反応は一瞬で起きます。その結果、反応と同時に沈殿物の中に多量の水も抱え込んだ三次元構造を形成してゲル状となります。ところがHDS法は、沈殿したA・Bの汚泥にAまたはBを接触させ吸着させます。たとえばAを吸着させると(A・B)n・Aの形となり、ここにBを接触させると、汚泥表面に(A・B)nA・Bという新たな懸濁物質が析出します。汚泥表面に析出するA・Bは、三次元構造ではなく平面的であるため、含まれる水分がなくなり、結果として汚泥の含水率が低下します。さらにこのような方法で析出した懸濁物質は、結晶化が起こりやすく、この結晶化も含水率低減の要因となります。
用語解説
ゲル状
ゾル(分子より大きいが顕微鏡では見えない程度の微細な粒子が液体中に分散したもの=コロイド溶液)がゼリー状に固化したもの。
CHECK POINT!
- 汚泥を高密度にして、水分含有量を低下させるのがHDS法です。
- 汚泥の表面に汚泥を重ねて析出させることで高密度化を図ります。
出典:よくわかる水処理技術(株式会社日本実業出版社発行)
解説者
栗田工業株式会社
佐藤禎一