No.008

逆浸透現象を利用したRO膜

用水・純水 純水・超純水

「逆浸透現象を応用したRO膜[逆浸透膜]」についてお話いたします。ガラスや金属が手に入らなかった時代、ヨーロッパでは豚や羊の膀胱が容器として使われていました。これにワインや塩水を入れて水中に放置すると容器内の液量が増すことが分かっていました(正浸透現象といいます)。この場合と逆方向に水を流す、逆浸透現象を応用して作ったRO膜[逆浸透膜]について解説します。


KCRセンター池上徹

解説者

栗田工業株式会社

池上徹

解説

RO膜[逆浸透膜]の説明をする前に、まず半透膜のお話をしましょう。ガラスや金属あるいはプラスチックなど液体を入れる容器が手に入らなかった時代、ヨーロッパではその容器としてブタや羊の膀胱が用いられていました。そして、この容器にワインや塩水を入れて水中に放置すると、容器内の液量が増すことが当時から知られていました。これを科学的に調査し、半透膜として説明がなされたのは19世紀末のことです。ワインや塩水の液量が増えるのは、容器内の液体と周りの液体との濃度が違うため、薄いほうから濃いほうへ水が膜を通過して移動した結果によるものです。正浸透といいます。

超純水製造にも使われるRO膜[逆浸透膜]

半透膜をはさんで塩水と真水を入れておくと、真水が塩水側へ膜を介して移動し、両サイドで水位差(浸透圧)が生じます。ところが、塩水側にこの浸透圧以上の圧力をかけると、今度は塩水側から真水側へ水が移動する逆浸透現象が生じます。この機能を水処理に応用したのが逆浸透膜で、最初に実用化したのは1950年以降のアメリカにおいてでした。この逆浸透膜を、安定した高分子膜でつくったのがRO膜[逆浸透膜]です。最初に実用化されたRO膜[逆浸透膜]は酢酸セルロースでつくられたものでしたが、現在ではポリアミド系複合膜を用いて、圧力0.75~1.5MPaで運転する方法が主流となってきています。以前は、海水やかん水を脱塩して真水(淡水)にすることが主体でしたが、最近では超純水製造システム、排水回収分野へとその用途は拡大してきています。RO膜[逆浸透膜]の孔は、電子顕微鏡でも見ることのできないレベルで、非多孔膜と呼ばれています。ただ孔というよりは、膜を構成している高分子間のすき間を水が通ると考えるほうが正しいでしょう。使用される膜の形式は、スパイラル型や中空糸膜方式が実用化されています。

浸透現象と逆浸透現象

用語解説

非多孔膜

気体分子や無機イオンなどの低分子の物質が透過できる細孔径(数nm以下)を有する膜である。

CHECK POINT!

  • 逆浸透現象を水処理に応用した逆浸透膜がRO膜[逆浸透膜]です。
  • 海水を真水にする以外に、超純水製造システムなどにも利用されています。

出典:よくわかる水処理技術(株式会社日本実業出版社発行)

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