膜を使った前処理方法
用水・純水 前処理・ろ過「膜を使ったろ過」についてお話いたします。砂ろ過など、通常の前処理では微細な濁質が残ることがあり、そのまま製造工程で使用すると様々なトラブルを起こしてしまいます。そこで、砂ろ過を通り過ぎる微細な濁質を除去するために膜が開発されました。そのしくみを解説いたします。
解説
通常、前処理でろ過といえば、砂ろ過、あるいは砂とアンスラサイトを使った二層ろ過のことを指します。ところが砂ろ過や二層ろ過で取り除けない微細なものがあります。それらが混入したまま工場の製造工程に使用されると、様々なトラブルの原因となってしまいます。そこで、砂ろ過や二層ろ過では取り除けないような細かい濁質を除去するために開発されたのが膜です。膜の役割は、膜を通して選択的な物質移動を行なわせることです。この物質移動には、膜の孔の大きさでふるい分ける「ふるい作用」と、膜の帯電などの電気的な力や反発力を利用してふるい分ける作用などがあります。水処理に利用されるのは、ほとんどが「ふるい作用」です。
さまざまな膜を使ったろ過法の特徴
水の膜ろ過は、その孔の大きさによって次のように分けられます。・精密ろ過(Micro Filtration:MF)有機膜と無機膜・限外ろ過(Ultra Filtration:UF)有機膜・逆浸透(Reverse Osmosis:RO)有機膜
膜の分離対象
膜分離法の特性と分離対象物を、表に示しました。精密ろ過法は、懸濁物質や細菌、超微粒子など、おおむね0.1~10μmの物質の通過を阻止し、限外ろ過法では、たんぱく質や酸素、細菌類やウイルスなど1~100nmの物質の通過を阻止します。さらに逆浸透法では、無機塩や糖類、アミノ酸やBOD、COD成分といった低分子やイオンなどを含む溶液を分離濃縮することができます。実際の水処理においては、こうした各種の膜を目的に応じて効率的に組み合わせて使用します。
用語解説
アンスラサイト質
もっとも炭化の進んだ石炭。揮発性物質や不純物が少ないため、細かく粉砕して粒径を揃えると、ろ過材として使用できる。
CHECK POINT!
- 砂ろ過では除去できない細かい濁質は、膜で除去します。
- ろ過で使う膜には、MF膜、UF膜、RO膜[逆浸透膜]などがあります。
出典:よくわかる水処理技術(株式会社日本実業出版社発行)
解説者
栗田工業株式会社
佐藤禎一