No.003

純水とは?その性質や製造方法について

用水・純水 純水・超純水

純水とは、井戸水や水道水などに含まれる様々な不純物、特にカルシウムイオンやマグネシウムイオンをイオン交換樹脂やRO膜(逆浸透膜)を用いた装置を利用して除去した水のことです。純水(英語:pure water)の中でも、特に純度の高い水を超純水(英語:ultrapure water)と呼びます。不純物を全く含まない純粋な水を理論純水といいます。

純水の性質と用途

純水には次のような性質があります

 

(1)不純物が少ないためスケールが発生しない

水が蒸発した際に水中に硬度や塩類成分があると、カルシウムやシリカ(ケイ酸イオン)の析出物として、スケールが発生します。

やかんなどでお湯を沸かすと残る白い水垢や、温泉で見かける湯の花などもスケールの一種です。

スケールが発生すると、熱交換器(熱を伝達利用する機器)の効率が落ちエネルギー使用量が増えたり、配管やノズルが詰まって流れにくくなったり、製品の洗浄後に白い汚れが残るなど様々なトラブルが生じる可能性があります。

純水には不純物が少ないため、水分が蒸発してもスケールが発生しません。

 

(2)物質を溶解させる高い機能を持つ

純水は、様々な物質を溶かしやすい性質を持っています。例えば、空気中の二酸化炭素をよく溶かします。

また、その特性を生かして、工業製品上に残った微量な不純物を溶かして洗浄する工程にも使われます。

 

 

純水は産業に幅広く利用されています

 

(1)純水

純水の活用シーン 純水の用途、目的

中高圧のボイラ用水
(低圧ボイラは軟水給水が多い)

スケールを防止し、エネルギーロスやトラブルを低減する
飲料の割り水 不純物が少ないため、濃縮還元飲料の割り水に適している
化粧品や薬品の希釈水 不純物が少ないため、製品の品質を保つことができ、成分が安定しやすくなる
電子部品洗浄水 ウォーターマーク(水垢)を防ぐため、電子部品の洗浄に利用する
オフィスビルの加湿用水 オフィスビルの加湿による白い粉の飛散を防ぐ
洗車、洗車機

乾燥後のウォーターマーク(水垢)を防ぐ

 

(2)超純水

 超純水の用途・活用シーンとしては、半導体製品の洗浄や、半導体製造に使用する薬品の希釈用に使用されます。

純水の水質

純水の水質は、大まかに電気の通りやすさ“電気伝導率”(導電率)で表わされます。
純水は0.05~1mS/m(ミリジーメンスパーメートル )、水道水は10~20mS/mです。

電気伝導率は、SI単位(国際単位)ではmS/mで表しますが、従来の工業単位ではµS/cm(マイクロジーメンスパーセンチメートル)も使われており、換算すると1μS/cm=0.1mS/mとなります。

また、高純度の純水では、電気の通りにくさを示す比抵抗の工業単位MΩ・cm(メグオーム・センチメートル)で水質を表します。

比抵抗は電気伝導率(μS/cm)の逆数で換算されます。

   

水道水

     

純水

   

超純水

   
       

RO処理水

イオン交換処理水

   

理論純水

水の用途                      

機械部品洗浄

 

機械部品洗浄

飲料用割り水

化粧品
原料

電子部品洗浄

 
                     
     

加湿空調

高圧ボイラ給水

医療用水

     
                     
電気伝導率[mS/m](SI単位)   10 1 0.1 0.01 0.0055
電気伝導率[μS/cm](工業単位)   100 10 1 0.1 0.055
比抵抗[MΩ・cm](工業単位)           1 10 18.24

※図の用途は例であり、全て該当する水質でなければならないという意味ではありません。

純水・超純水の違い

超純水・精製水・蒸留水などとの違いとともに、純水についてもう少し詳しく解説します。
純水と超純水は、水質の基準値や基準項目に違いがあります。

分類 水質の基準値や基準項目
純水

基本的に水溶液中の電解質を対象とし、電気の通りやすさ“電気伝導率”とシリカ濃度で定義される

純水のpHは中性(6.0~8.0)。ただし空気中のCO2の溶け込みにより低く示す場合がある

超純水 電解質はもちろんのこと、水中に溶解している有機物、生菌、微粒子なども一定基準以下であることが求められる

※水道水にも国が定めた51の水質項目の規定があります。

 

 

製造方法による水の分類(精製水・蒸留水・RO水・イオン交換水の違い)

純水と超純水は水質の規定による違いでしたが、製造方法による違いで水を分類することがあります。

分類 製造方法
精製水 蒸留、RO膜(逆浸透膜)、イオン交換の一つ、または複数の処理を行って不純物を取り除いた水の総称
蒸留水 蒸留器で水を一度加熱して蒸発させ、出てきた蒸気を冷やして水に戻し、不純物を分離した水
RO水 RO膜(逆浸透膜)を通して処理した水
イオン交換水

脱塩水や脱イオン水とも呼ばれる

イオン交換樹脂(水中のイオン状の不純物をイオン交換樹脂が持つ水素イオンまたは水酸化物イオンと交換し純水とする特殊な機能材)と触れさせて処理した水

イオン交換樹脂には、陰イオンと置き換わるアニオン型と陽イオンと置き換わるカチオン型がある

純水の製造方法の種類

純水は、RO膜(逆浸透膜)やイオン交換樹脂を使って作ります。

 

      RO膜-連続式電気脱イオン イオン交換樹脂法
概要 逆浸透圧現象により、処理水中の不純物イオンは減少し、一方で排水中の不純物イオンは濃縮されて排出される
さらに連続式電気脱イオン装置を用いて純度を高める
水中のイオン状の不純物をイオン交換樹脂が持つ水素イオンまたは水酸化物イオンと交換し純水とする
定期的に塩酸や苛性ソーダで樹脂を再生し、再び純水製造を可能とする
処理フロー RO ION
メリット

・連続通水のため水質が安定

・薬品管理がない分、保守管理が比較的容易

・再生薬品が不要/排水処理の負荷が少ない

・設置面積が小さい

・排水量が比較的少ない

・比較的入手しやすい薬品の使用で繰り返し利用でき、継続的に効果が期待できる

デメリット ・排水量が比較的多くなる

・再生時に純水供給が停止

・薬品管理があり、保守管理が煩雑

・再生排水のpH調整が必要

・再生薬品の保守管理が必要

・設置面積が大きい

規模 ・小-中規模水量向け ・大規模水量向け
備考

原水の水質、処理水の水質や水量、放流先に応じて、最適な処理方法を検討する

小規模の場合はデミナー単体、またはRO膜ーデミナーを用いる場合がある

純水製造装置の例

前項で説明した処理方法を用いた装置をご紹介します。

 

RO膜-連続式電気脱イオンを使った装置
イオン交換樹脂法を使った装置

“設備を買わずに純水を使う”

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詳しくはこちら>設備を買わずに純水を使う純水供給サービス「KWSS」

純水供給サービスKWSS

 

(参考:相談事例)

詳しくはこちら>純水装置の更新にあたり、今よりも管理を楽にしたい

詳しくはこちら>純水製造を管理する人がいないので、管理の手間を減らしたい

詳しくはこちら>純水供給サービスで節水、省力化を実現

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