No.003

純水とは?その性質や製造方法について

用水・純水 純水・超純水

「純水」が果たす役割、その性質や用途・活用シーンから製造方法までを解説します。


解説

自然界の水や水道水には、カルシウムなどの硬度成分、ナトリウムやシリカ(珪酸)などの塩類成分が溶解しており、その成分が用途によっては工業機械や製品にトラブルを生じさせ、使用に適さない場合があります。そこで、水中のこれら成分を取り除いた水“純水”を製造して工業用に利用しています。

純水の水質は、大まかに電気の通りやすさ“電気伝導率”で表わされ、電気伝導率で0.05~1mS/m(ミリジーメンスパーメートル ※水道水は10~20mS/m)です。電気伝導率は、SI単位(国際単位)ではmS/mで表しますが、従来の工業単位ではµS/cm(マイクロジーメンスパーセンチメーター)も使われており、換算すると1μS/cm=0.1mS/mとなります。また、高純度の純水では、電気の通りにくさを示す比抵抗の工業単位MΩ・cm(メグオーム・センチメートル)で水質を表します。比抵抗は電気伝導率(μS/cm)の逆数で換算されます。

 

■純水の水質と用途

pure

※図の用途は例であり、全て該当する水質でなければならないという意味ではありません。

純水の性質と用途

■純水には次のような性質があります。

(1)不純物が少ないためスケールが発生しない

水が蒸発したときの残留物が少ない水中に硬度や塩類成分があると、水が蒸発した際にカルシウムやシリカ(ケイ酸イオン)の析出物として、スケールが発生します。やかんなどでお湯を沸かすと残る白い水垢や、温泉で見かける湯の花などもスケールの一種です。

スケールが発生すると、熱交換器(熱を伝達利用する機器)の効率が落ちエネルギー使用量が増えたり、配管やノズルが詰まって流れにくくなったり、製品の洗浄後に白い汚れが残るなど様々なトラブルが生じてきます。純水には不純物が少ないため、水分が蒸発してもスケールが発生しません。

 

(2)反応をさせる媒体としての高い機能と、物質を溶解させる特性を持つ

純水は、様々な物質を溶かしやすい性質を持っています。例えば、空気中の二酸化炭素をよく溶かします。また、その特性を生かして、工業製品上に残った微量な不純物を溶かして洗浄する工程にも使われます。

 

■純水は産業や公的機関に幅広く利用されています。

純水の用途例 目的
ボイラ用水 スケール防止のため、中高圧ボイラの給水として利用する
(低圧ボイラは軟水給水が多い)
飲料の割り水 不純物が少ないため、濃縮還元飲料の割り水に適当
電子部品洗浄水 電子部品の洗浄用水に利用し、ウォーターマーク(水垢)を防ぐ
オフィスビルの加湿用水 オフィスビルの加湿による白い粉の飛散を防ぐ

純水の製造方法の種類

純水は、RO膜[逆浸透膜]やイオン交換樹脂を使って作ります。

 

  RO膜-連続式電気脱イオン法 イオン交換樹脂法
処理フロー RO ION
メリット

・連続通水のため水質が安定

・保守管理が簡素化

・再生薬品が不要/排水処理の負荷が少ない

・設置面積が小さい

・排水量が比較的少ない

・比較的入手しやすい薬品の使用で繰り返し利用でき、
継続的に効果が期待できる

デメリット ・排水量が比較的多くなる

・再生時純水供給が停止

・保守管理が複雑

・再生排水のpH調整が必要

・再生薬品の保守管理が必要

・設置面積が大きい

規模 ・小-中規模水量向け ・大規模水量向け
備考 原水の水質、処理水の水質や水量、放流先に応じて、最適な処理方法を検討

 

(参考)

基礎学習動画:純水設備の比較RO膜イオン交換樹脂

純水製造装置の例

前項で説明した処理方法、RO膜-連続式電気脱イオン法とイオン交換樹脂法を用いて実際どのような装置なのか、クリタが提供している製品をご紹介します。

 

RO膜-連続式電気脱イオン法を使った例
イオン交換樹脂法を使った例

“設備を買わずに純水を使うサービスの利用”という選択肢があります

お客様が純水を利用しようとする場合、装置導入を検討する際の情報収集、社内稟議、高額な設備投資、維持・管理の人材確保などへの対応が課題ではないでしょうか。設備を購入することが難しい場合でも、あきらめずに純水を利用いただけるソリューションをクリタは用意しています。

クリタが提供する「KWSS」は、お客様の工場内にクリタの資産として純水装置を設置し、製造した純水を月額一定料金でお客様にご利用いただくサービスです。維持・管理・メンテナンスの負担から解放され、装置購入と比較してコスト削減が見込めます。サービスを利用することで得られる価値(設備を買わずに純水を使う)を重視して、契約型を選択されるお客様が増えています。

 

設備を買わずに純水を使う純水供給サービス「KWSS」:詳細はこちらからどうぞ

純水供給サービスKWSS

 

(参考)

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用語解説

純水とは

井戸水や水道水などはいわゆる純粋な水ではなく、様々な不純物を含んでいます。とくにカルシウムイオンやマグネシウムイオンは、量的にも多く存在します。イオン交換樹脂やRO膜といった装置を利用して、これらのイオンを除去した水を純水と呼びます。

CHECK POINT!

  • 逆浸透現象を水処理に応用した逆浸透膜がRO膜です。
  • イオン交換樹脂には、陰イオンと置き換わるアニオン型と陽イオンと置き換わるカチオン型があります。
KCRセンター池上徹

解説者

栗田工業株式会社

池上徹

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