No.002

水処理とはなにか

一般事項

「水処理とはなにか」についてお話いたします。水処理とは水の中から不純物を取り除くことです。生活用水では見た目の清浄さや健康維持を目的とし、産業用の水は用途に合わせた処理プロセスがあります。また、排水は環境への負荷を少なくして放流する必要があります。その処理方法について説明します。


KCRセンター佐藤禎一

解説者

栗田工業株式会社

佐藤禎一

解説

私たちは河川水や地下水を生活用水や産業用水として利用し、利用した水は再び河川や海に戻しています。このサイクルを回していく過程では目的に応じ、水の中に含まれている不純物を取り除く必要があります。水処理とはこの不純物を水の中から取り除くことであり、生活用水であれば見た目の清浄さ、人の健康を維持することを目的とし、産業用として使われる水の場合はそれぞれの用途に合わせて処理プロセスが決められます。また、利用した水を自然に返す場合は、汚染の程度、放流先の基準に合わせ浄化処理を行い、自然環境への負荷を少なくして放流する必要があります。これらの水処理にはいろいろな方法がありますが、最終的に要求される水質を低コストで安定して確保することが大切であり、そのためには個々のプロセスを最適なものにしていく必要があります。このプロセスを決めていく過程では理論と経験が要求されますので水処理はある意味で経験工学的な一面も有しているといえます。

水に溶けているもの

水は無色透明であっても何かが混入しています。これらは大別すると、夾雑物(ゴミ、埃、粘土質、砂鉄など)、水生生物(細菌、微生物など)、有機物質(藻類や樹木が微生物の働きで分解されたもの、有機洗剤が自然界へ流出したもの等)、無機塩類(カルシウムなどの硬度成分、塩分、溶解鉄など)、気体(二酸化炭素、酸素、硫化水素など)等があります。

水道水と工業用純水

水を処理するということはどういうことでしょう。(1)川の水を飲料用水にする。(2)水道水を純水にするなどのケースがあります。川の水は川底の泥や有機物、微生物などが混入して、濁りや着色成分となっています。これらを取り除き殺菌処理をして、無色透明で安全な飲料水を作ることができます。水道水を純水に変える場合はどうでしょうか。純水は、不純物が殆ど入っていない水です。夾雑物や微生物がすでに取り除かれている水道水から更にカルシウムやナトリウムなどの無機塩類や二酸化炭素などを取り除いて純水を作ります。このとき、最初に入っていた無機塩類は99~99.9%除去され、不純物の少ない純水になります。このように水処理では水中の不純物をサイズの大きいものから、順に除去していきます。

分離技術の適用範囲

水処理装置

河川水から、夾雑物や微生物を取り除くときには前処理装置を使います。前処理装置はろ過器やろ過膜、活性炭ろ過器などがあります。また、水道水から、無機塩類を取り除く際には、イオン交換装置やRO膜[逆浸透膜]装置のような純水装置を使います。一方、工場などで使用した水を処理し河川に放流可能な水にするためには、生物処理、沈殿槽、加圧浮上装置などの排水処理装置を使います。次回より、水処理装置の原理や実物の紹介、処理水の用途による水処理システムの違いなどを紹介いたします。

水処理教室バックナンバー

同じカテゴリの記事をご覧いただけます。

  • No.067 一般事項

    水処理で使用される微量な単位

    「水処理で使用される微量の単位」についてお話いたします。水処理では、ごく微量の化学物質を処理対象とするため、それを表す単位が用いられています。一般的に知られている単位のppmは、part per millionの略で100万分の1を表しています。その他、水処理でよく使われる単位について解説いたします。

  • No.066 一般事項

    酸化・還元反応の基本的な意味

    「酸化・還元反応の基本的な意味」についてお話いたします。水処理では、さまざまな物質を除去するために酸化剤や還元剤を投入して酸化・還元反応を起こします。たとえば、C(炭素)とO2でCO2(二酸化炭素)ができるなどの反応が代表例です。ここでは、その酸化・還元反応について解説いたします。

  • No.065 一般事項

    水処理技術のキーワード「懸濁物質(SS)」

    「懸濁物質」についてお話いたします。水中に浮遊・分散する粒の大きさが1μm(0.001mm)~2mmの物質を懸濁物質(SS)、または浮遊物質といいます。懸濁物質は水1リットルあたりに含まれる重量(mg/L)で表します。今回はその測定方法などについて解説いたします。

  • No.064 一般事項

    水処理技術のキーワード「COD」

    「化学的酸素要求量」についてお話いたします。水中の有機物などを酸化剤で分解する時に消費される酸素量を表した数値が化学的酸素要求量(COD)です。主に湖沼や海域の汚濁状況の確認や、排水中の水質検査などに使われています。その測定方法やBODとの違いなどについて解説いたします。

  • No.063 一般事項

    水処理技術のキーワード「BOD」

    「生物化学的酸素要求量」について説明いたします。水中の有機物質を好気性微生物が分解する時に、水1リットルあたり何mgの酸素が必要なのかを表した数値が生物化学的酸素要求量(BOD)です。主に河川の水質を表す指標として古くから使われてきました。その測定方法などについて解説いたします。

  • No.062 一般事項

    水処理技術のキーワード「溶存酸素」

    「溶存酸素」についてお話いたします。溶存酸素はDO(Dissolved Oxygen)とも呼ばれる水中の酸素濃度を表す指標です。今回はその概要と測定方法について解説いたします。

ログイン・ユーザー登録

基礎学習動画の閲覧や製品カタログのダウンロードを
ご希望の方は、ログインまたはユーザー登録を行ってください。

WEBからのお問い合わせ

水処理に関するご相談やKCRセンターに関する
ご質問など、こちらからお気軽にお寄せください。