生物処理(活性汚泥法)を用いた排水処理設備の運転トラブル対策

排水 生物処理

排水負荷が下がった時、いつものように運転していたら、処理水が濁ってしまった

お客様の工場の操業状態が変わり、排水の流入負荷(排水量)が低下しました。その時、特に運転状態は変えず通常運転としていたところ、処理水の濁りが発生してしまいました。

生物処理(活性汚泥法)を用いた排水処理設備の低負荷時には、運転条件を調整して対応します

一般的に生物処理(活性汚泥法)を用いた排水処理設備において、排水中の有機物の濃度や排水量の低下といった低負荷時には、適切な処置を取らないとトラブルにつながる可能性があります。このような時には、以下の①~③のように運転条件を調整して対応する必要があります。

 

活性汚泥法を用いた排水処理設備の低負荷運転時のチェックポイント

ステップ①:排水負荷の低下に合わせて、空気量を調整する

通常の運転条件と同じだけ空気を供給したまま排水負荷が低下すると、活性汚泥が分解する自己消化という現象が起こります。汚泥が分解すると細かく分散し、沈殿槽で沈むことができずに処理水が濁ることがあります。

 

(1)排水負荷の低下に合わせて、ブロアから曝気槽への空気量を減らします。空気量を減らし過ぎると微生物が死滅したり、汚泥が沈んで曝気槽の底にたまってしまうため、槽内の溶存酸素量(Dissolved Oxygen:DO)と撹拌状態に注意する必要があります。活性汚泥を沈降させない程度に、DOが 1.0~2.0mg/L より低くならないよう管理が必要です。

(2)窒素やリンを添加している場合は、負荷の低下に合わせて、添加量を減らします。

(3)低負荷が長期間続く場合は、曝気槽内の活性汚泥濃度を減らすことも有効です。

(4)コストはかかりますが、必要最低限の栄養分を注入し、微生物を維持することもあります。

【復旧方法】

通常時の運転に復旧させる際には、微生物の活性が戻るまで時間がかかることに留意する必要があります。排水負荷が上がってくるのに合わせて、供給する空気の量を増やしていきます。活性汚泥濃度を減らした場合は、微生物の増殖に合わせ、段階的に負荷を上げていくことをお薦めします。

ステップ②:設備を一時的に停止する場合

短期的に排水が流入しない場合、排水処理設備の停止を検討します。

1週間程度の停止を行う場合は、活性汚泥の自己消化・腐敗を防ぐため、空気の供給量を調整します。空気の供給を間欠的に行う間欠曝気を行うことも可能です。

※空気を止めると汚泥が腐敗して硫化水素が生成することがあるため、空気供給を再開するときに注意が必要です。

【復旧方法】

停止すると、微生物が排水中の有機物を吸収・分解する能力が低下するため、排水処理を再開する場合は段階的に負荷を上げていくことが重要です。

ステップ③:設備を一定期間停止させる場合

排水処理設備を1週間以上停止させる場合は、活性汚泥を維持するための処置が必要となります。

 

(1)数日に1回程度、排水の代わりに炭素源となる有機物を曝気槽に添加し、空気供給を行うことで活性汚泥中の微生物を維持します。

(2)炭素源にはグルコースやエタノールなどが用いられますが、排水の種類によって適した炭素源が異なるため、専門家に相談することをお薦めします。実施の目安として活性汚泥濃度は1,000mg/L以上に、水中の溶存酸素濃度はゼロにならないようにします。

(3)短期間の停止と同様に、空気を供給する時は、硫化水素の臭気や安全対策に注意が必要です。曝気槽のほか、汚泥貯槽や汚泥の脱水機でも、硫化水素の発生にも注意が必要です。

【復旧方法】

停止期間が長くなるほど時間をかけて通常運転に戻す必要があり、段階的に負荷を上げていきます。専用に配合された活性化剤もありますので、再稼働時に添加することもお薦めします。また停止中に汚泥の分解が進んだ場合、曝気槽内の水質が変化し、処理水質の悪化を招くことがあるので、事前の水質確認が必要です。

まとめ

生物処理は生き物をあつかうため、デリケートな対応が求められます

活性汚泥法は、好気性の微生物に排水中の有機物を処理させる方法のため、空気の供給量や有機物の濃度などの管理が重要になります。運転条件の見直しや設備の停止が必要な場合は、この記事を参考に手順の確認と調整を行ってください。また生物処理は対処が難しくなる場合もありますので、いざという時に問い合わせができる“掛かり付けのお医者様”のような専門家・業者がいると安心です。

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