凝集沈殿法を用いた排水処理設備の運転トラブル対策

排水 凝集分離

排水量が低下した時、排水処理設備をいつもと同じように運転していたら、処理水質が悪化してしまった

お客様は、排水処理設備に流入する水量が低下した状態で、いつものようにpH調整を行ったが、運転条件の範囲内でpHが一定にならず、酸側・アルカリ側に大きく振れていました。その影響で、凝集状態に乱れ(沈みにくい、処理水が濁る、処理対象である溶解性物質が除去しきれないなど)が生じ、処理水質が悪化してしまいました。

排水処理設備の低負荷時には、留意すべきポイントがあります

一般的に凝集沈殿処理において、排水中の微細粒子(Suspended Solid:SS)の濃度が低く、排水量が低下するといった低負荷時には、処理性能は良くなる傾向にありますが、状況によっては適切な処置を取らないと大きなトラブルにつながる可能性があります。このような時に留意すべきポイントと対策をお示しします。

 

低負荷運転時のチェックポイント

チェックポイント①:点検で原水槽の底に濁質の堆積はないか?

原水量が低下すると流速が低下し、設備内部で濁質が沈降しやすくなるため、エアーを吹き込んだり水中ポンプで流れをつくることで、堆積を回避できます。

チェックポイント②:pHが変動し、凝集不良を起こしていないか?

反応槽、凝集槽のpHが適正範囲になっているか確認します。通常、排水性状や水量に大きな変化がある場合、制御範囲を超過している場合があります。pH調整用の酸かアルカリポンプの吐出量の見直しや、pH制御の設定を調整することで、pHが安定して凝集状態や水質が良くなります。

チェックポイント③:凝集条件が変わってしまっていないか?

沈殿槽でのフロックの沈降性が悪化した場合は、ジャーテストと呼ばれる凝集テストを行い、無機凝集剤の注入量を見直します。改善が見られない場合は、無機凝集剤の種類や添加方法を見直すことも有効です。低負荷に合わせて薬注条件を変更した場合、負荷が上がってきた時は、薬注量を忘れずに戻しましょう。

排水処理設備を一定期間停止する場合、停止前に汚泥の引き抜きと配管洗浄を推奨しています

一定期間停止する場合のチェックポイント

チェックポイント④:汚泥の引き抜きと配管洗浄の実施を検討

設備を停止させる必要がある場合、沈殿槽に汚泥が残ったままだと、汚泥が過度に濃縮され排出されなくなったり、沈殿槽から汚泥を引き抜く配管が閉塞することがあります。そのため、停止前に強制的に汚泥を引抜、汚泥引抜配管を洗浄する、といった対応が有効です。また、生物汚泥の場合は作業時に引き抜いた汚泥の貯槽や脱水機周辺で硫化水素が発生する恐れもありますので、十分にご注意ください。停止期間が1週間を超える場合は、設備メーカーに対応を相談することをお薦めします。

まとめ

排水量の低下など処理環境に変化があった場合、適切に運転条件を見直しましょう

排水中の微細粒子(Suspended Solid:SS)の濃度が低く、排水量が低下するといった低負荷時には、排水処理設備のトラブルにつながる予兆や変化があります。これまで上手く稼働していた運転条件でも、見直しが必要になる場合がありますので、処理水質の悪化の際には留意すべきポイントをご確認ください。

無機凝集剤の注入量を自動制御で処理水質の安定化と省力化を図る

凝集状態をセンシングし、無機凝集剤の注入量を自動で調整する設備を導入する事例も増えています。自動制御することにより、処理水質が安定するうえ、管理・調整の手間が省け、過不足なく有効な対策です。

 

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